特別支援教育の生きたICT機器活用ー「魔法のプロジェクト」次年度募集締切目前!


タブレット端末のようなICT教育ツールは、柔軟に「適材適所」で使っていくのが大切、というのが前回の話題でした。

実は、この視点が徹底されていて、実践例が豊富にあるのが、特別支援教育の分野だと、最近強く感じています。

特別支援教育の分野は生きた事例が豊富!

先月、2015年1月24日(土)に東京大学先端科学技術研究センターで開かれた「魔法のワンドプロジェクト」の成果報告会に参加してきました。

「魔法のプロジェクト」というのは、東京大学先端科学技術研究センターとソフトバンクモバイル株式会社、株式会社エデュアスの共同プロジェクトで、携帯情報端末を、障がいを持つ子どもたちの生活や学習支援に活用する事例研究を、2009年から行っています。( 魔法のプロジェクト)「魔法のワンドプロジェクト」は、その2014年度のテーマでした。

公私立を問わず、研究協力校を募集し、1年かけてiPad等のICT機器を貸し出し、実践〜成果発表をしてもらうというもので、報告会では現実的でかつ理想的な実践例を聞くことができました。

このプロジェクトがユニークなのは、指導計画を作って応募する単位が「学校」や「クラス」という大きなくくりではなく、「担当教員と対象者(児童生徒)」単位なところでしょう。同一校から複数組応募することもできます。

障がいの特徴というのは、仮に「障がい名」が同じだとしても個人によって様々で、指導計画も個人別に作られるので、この応募単位はとても実情に合っているのです。

また、児童生徒が端末を持ち帰ることも認められているのも評価できます。子どもが抱える困難さは、学校でだけの問題でなく、家庭での学習や日常生活ともひと続きなので、自宅に持ち帰ることができるのは、時にとても重要です。

例えばこんな活用事例

報告会で紹介された事例から、活用シーンだけを取り出してみると、例えば

  • 重い荷物を持てない病気の生徒が持てるキロ数まで「荷物を減らすため」に教科書類をデジタル化する。
  • 板書をノートに取ることが著しく困難な児童が、カメラ機能で板書を撮影してノートとして活用する。
  • ページをめくる動作が困難な児童にデジタル教科書でページめくりを容易にする。
  • 発声が困難な児童がタイプした文字を発声する機能を使う。
  • 記憶するのが困難な児童が、リマインダー機能を使う。

……非常に具体的で納得のいく使い方にあふれています。

特別支援教育分野でのICT機器活用

機器が導入されたけれど、何に使おう? どうやって活用する? という、「機器ありき」の世界ではなく、今ある困難さをサポートするのに、こう使える、こうも使える……という、生き生きした事例にあふれています。

困難なことは別のアプローチで「補う」

もしかすると、上記の使用例、特に身体的な困難さではなく、認知系の困難さについて代替手段を用いることを「努力を放棄している」と感じる人がいるかもしれません。でも、ちょっと見方を変えてみてください。

例えば視力が低下して、「気合いで見えるよう努力する」人はいません。普通、メガネをします。それと同様に、何らかの困難さを抱える人が、困難な課題に対して手段を変えてアプローチをするのは、ごく当たり前のことなのです。

代替手段やサポートを積極的に利用して、困難さを自らカバーすることを身につけることも、日常生活/社会生活の質を上げるのには大切です。

こうした考え方がベースにあると、無為に「ICT機器だから」使うのではなく、優れている点では使う、他の手段の方がよければ使わない……、という切り分けが明確にできます。この切り分け視点は、通常学級の教育現場でICT機器を使う時もとても重要で、学ぶところが多いのではないでしょうか。

次年度募集が締め切り目前!

実は、2015年度の研究協力校の募集も行われているのですが、あと少し、2015年2月23日(月)で終わってしまいます。下記リンク先、募集要項のフォームから応募が可能です。

こうしたプロジェクトへの参加は、無償で機器を借りて実践できるチャンスであるばかりでなく、自分の実践を発表し学校や地域の垣根を越えて交流できるという、面白さもあります。

今回プロジェクトへの応募は間に合わなくても、先行事例を参考に、具体的な導入を検討してみてはどうでしょうか。特別支援教育を受けている子どもの保護者の方も、親から先生にお願いや提案をして、指導方法のひとつとして具体的に検討してもらうというきっかけにもできるかもしれません。


狩野 さやか

株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブやアプリのデザインを中心に制作全般担当。「ICT toolbox」運営責任として、特に家庭や学校現場でのアイディアや取り組みに注目している。子育て分野では他メディアにコラムを寄稿し、「patomato-ふたりは同時に親になる」を主宰してワークショップ等を行っている。

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