今すぐできるオンラインの学び〜一斉メールと学校ホームページでできることから着手!

突然の一斉休校がスタートした3月の頭からすでに丸1ヶ月。さらに休校措置が少なくとも連休明けまで延期になったエリアも多く、4月に3月の積み残しは取り戻せば間に合うという見込みは消えました。では、5月の連休明けから学校が再開できるのかといえば、今の時点では誰にもわかりません。学校に子どもたちが通えない状況は、いよいよ長期戦の様相となりました。

残念ながら、こんな状況でもオンラインでの学びはなかなか簡単には進みません。1人1台のPC環境を整えている自治体は限られていますから、ハードが整っていないことを理由に、諦めている学校もあるでしょう。先端事例のようにはできないからといきなり諦めてゼロでとどまっている学校がたくさんあります。

でも、オンライン化に着手している学校の多くが、決して多くの人が考える「完全な形」で始めているわけではありません。全てが整うのを待っていたら半年や1年はあっという間に経ってしまいます。今すぐできることから「ほんのちょっとだけデジタル&オンライン」を始めてみませんか?

今持つ設備と手段だけでできることから始める

学習のオンライン化というとまず、収録動画やリアルタイムでの「オンライン授業」や、課題をデジタルデータでやりとりするようなスタイルを想像すると思います。ですが、いきなりそれらをやろうとするのは、これまでICTの活用が不十分だった学校にとってはあまりにもハードルが高すぎます。以下の問題にすぐに直面してしまいます。

・学校が利用できる教育系グループワーク環境がない
・子ども全員に平等なハード環境を提供できていない

これらは、仮に計画的に予算を立てて進めていたとしても、どちらも瞬間的には解消できないことです。ですが、その代わりに次の2点は現在多くの学校が導入しているのではないでしょうか。

・学校の「ホームページ」
・保護者向けの「一斉メール」

メールとホームページで何ができるっていうの?と思う方もいるかもしれません。どちらもデジタルの世界ではプリミティブな部類の手段で、学校側からの一方通行のメッセージしか発信できませんが、それでもできることがあります。

今すぐできるオンラインの学び

こまめなメッセージの発信で子ども達のモチベーションを維持

メールとホームページで今すぐで出来るのは、こまめなメッセージの発信です。
授業や課題をデジタルに置き換えられなくても、課題はこの際アナログで構いません。登校日にプリントやワークブックを配布した学校が多いと思いますから、それで十分といったん割り切ります。

家庭で子どもを見ていて学習に一番重要だと感じるのはモチベーションです。どんなに優れた教材があったとしても、子どもがその気にならなければ全く機能しません。教材がデジタルの商業的な動画教材やタブレット教材であっても、学校のアナログなプリントやワーク類であっても、それは同じです。仮に最初にやる気になったとしても3日もすれば気持ちはダレるもの。やる気やキープしてモチベーションを維持してくれる伴走者が必要です。

そこで、一方通行でいいので、一斉メールで子ども向けのメッセージを発信することから始められないでしょうか。内容は、学習内容の伝達ではなくても、ちょっとした声かけやメッセージで構いません。デジタル学級便りのようなイメージです。学年別一斉や学校一斉の内容でもまずは十分です。

例えば朝必ずメールが配信されて、保護者が子どもに先生からのメッセージを見せることで、子どもは学校・先生と小さな接点を持てます。これで1日が始まるというリズムができるだけでも、アクションがゼロであるよりは全く意味が違うと思うのです。

学校のホームページに掲載した上で、一斉メールで配信するということでも良いでしょう。公開情報であるというを意識して注意して文章を作れば、自校の児童・生徒に向けたメッセージをオープンにしても困ることはあまりないはずです。

今家庭にいる子ども達に必要なのは、家の中だけで流れる時間にノイズを加えること。実は保護者も子どもとの密すぎる時間に疲弊しています。伴走者でありたいと思ってもゲームやYouTubeから引き離す監督者になってしまうのが日常の現実です。学校からの小さなアクションが入リこむだけでリズムができる可能性があります。

そこでさらに先生方のファシリテーション力が発揮されれば、子どものリズムだけでなく、学習意欲をキープすることにつながるはずです。先生も子どもに会えない日が続くとモチベーションが下がると聞きます。会えない今だからこそ、一方通行で構わないので全力でメッセージを発信することから始められないでしょうか。

情報を細かく伝えることをおそれないで

今回のような事態になったとき、情報伝達の観点で一番大切なのは、学校が「一度決めた決定を覆さないこと」ではなく、日々変わる状況をこまめに知らせることだと考えます。非常事態ですから、朝決めたことが夕方変更になっても構いません。

・情報は変わる可能性があること
・変わったらホームページと一斉メールで伝えるから必ずチェックして欲しいこと

の2点を呼びかけた上で、情報を開示していく方が、学校と親の信頼関係を築くことができます。「学校が何を考えているのかわからない」という状態は保護者の不信感につながり「何もやっていない」と思わせてしまいます。子どもが物理的に学校にいけない以上、学校としては子どもに渡すプリント以外の方法で、「今学校が何を考えているのか」「学校で何が起きているのか」を知らせる必要があります。広報のようなものだと考えれば良いでしょう。不安や不信感が元になる電話での問い合わせを減らすことにもつながります。

一斉メールや学校ホームページを「全員平等に見られるとは限らない」と躊躇する必要はありません。「見られるとは限らない」人にはぜひ、従来の手段で引き続きアプローチしてください。それは結果的に、自力で情報を取りに来られる家庭には効率よく一律に情報提供をし、そうでない家庭には、より手厚く時間と目をかけることにもつながるはずです。

「ホームページ」と「一斉メール」の運用ルールを最大限にゆるめて積極的に使うことは、今すぐ無料ではじめられます。これらを柔軟に運用して情報出すことに慣れることが、必ず今後の学校でのICT活用の大切な基礎になります。

目標は低く、ほんの小さなことから始める。ぜひ、今すぐ検討してみてください。

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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3件のフィードバック

  1. 柴田俊一 より:

    大学もオンライン授業化を迫られており、私をはじめ先生方は、ばたばたしています。このレベルからはじめればいいのかと思いました。

    • まずはここからでも、今すぐ動いてみることが大切だと感じています。大学の場合、ゼミ内がLINEでつながっていれば、それをメインのコミュニケーション手段にするのが一番早いかもしれませんね。

      これならば予算がなくても運用ルールさえゆるめれば「今すぐに始められる」、と考えての提案です。もっと上のレベルの環境を整えながらも、全てが整うのを待たずに、今できることには是非、すぐにでも着手して欲しいと感じています。

  1. 2020-04-19

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