黒板でも投影と板書がシームレスにできる「Kocri」に期待大〜オフライン利用可能なのが現実的!

先生が、模造紙や大判の画用紙に作った教材をマグネットで黒板/ホワイトボードに貼ったり教科書の問題を板書する代わりに、ぱっと教材を映せたらどうでしょう?例えば図形問題や白地図をワンタッチで投影してそこに板書で書き込みをしていく…。

以前、実物投影機についての記事で、「実物投影機+ホワイトボード」の環境があれば、そんな風に教科書の文章や、ノートのマス目やライン、図形になどをホワイトボードに投影し、そこに直接板書するような「板書と投影のシームレスな使い方」ができることをご紹介しました。

授業準備の省力化だけでなく、子どもの理解を助けるのにとても便利で、完全アナログ授業の発想の延長線上で無理なく導入できるでしょう。

なんだ!うちは黒板だ!

0_kokubanところが、「ホワイトボード+実物投影機、どころか、うちの教室は黒板なんだけど…!」という環境では、当然、実現しません。

こんなもどかしさを、さっと越えさせてくれるツールが実はあります。それがこちらのハイブリッド黒板アプリ「Kocri(コクリ)」です。これはプロジェクター経由で黒板に教材をクリアに投影できるという革新的なツールです。(株式会社カヤック/株式会社サカワ)

プリセットで入っている罫線や図形を白いラインで表示させられるだけでなく、自分で作った教材もOK。黒板に直接写した教材にチョークで板書を加えることができるのは、なんとも不思議ですが「これは便利!」。

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昨年2015年5月教育ITソリューションEXPOで撮影

黒板地では見にくそうな、写真や絵、動画などのカラー素材やPDF文書などは、白背景付きで投影されるので十分楽しめるクオリティ。また、白黒反転で表示してくれる機能もあるので、わざわざ黒地に白文字や白い線の教材を作らなくても大丈夫です。

昨年、「グッドデザイン賞 グッドデザイン・ベスト100」「第12回 日本e-Learning大賞」をとるなど話題も集めました。

何が必要なの?

必要なものは、通常のプロジェクターApple TViPhone(iPod Touch、iPadも可)です。プロジェクターはすでに学校にあるものとして、Apple TVに投資をすれば、手持ちのiPhoneにアプリを入れて利用を始めることが可能です。Apple TVというのは、いわゆる「テレビ」ではありません。10センチ角の正方形の分厚い箱のような機器です。

Apple TVは、通常、インターネット経由のサービスで視聴する動画を普通のテレビで表示するためのベースステーションとして使います。

新しいもの好きの先生が、自宅用のApple TVを学校に持ち込んで自分のiPhoneにアプリを入れて試す、なんていうレベルで手軽にチャレンジできそうなイメージですね。

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昨年2015年5月教育ITソリューションEXPOで撮影

「モバイル」であることを生かす工夫

iPhoneにアプリをいれて操作するので、リモコンのようにハンディーなのがポイント。自分の動きを実物投影機やパソコンの前に止めずに授業が進められるので、子どもの席を回ってノートや作品をどんどん撮影して、その場でどんどん前に投影する、なんてライブ感の高い使い方もできます。

図工の先生がデジカメで作業中の子どもたちの作品をどんどん撮影し、パソコンにさっとつないで、最後にプロエジェクターで表示してコメントするシーンを見たことがあります。これは限られた道具を工夫して使っていて面白いな、と思いましたが、こんな作業も、パソコンを介さずにiPhone単体でもっとスムーズにできますね。

活用アイディアは「kocri」のサイトで映像も沢山見られるのでそちらでチェックしてみましょう。

「デジタル慣れ」が必要ではあるけれど

自分でパソコンで作成した教材をアプリに移動するには、iTunesかDropboxを使うことになっているので、このあたりに慣れる必要はありますが、使い慣れている方なら覚えるまでもないこと。また、一旦概念を理解してしまえば難しい作業ではありません。

電子黒板と格闘するよりははるかに敷居も低く、導入コストが比較にならないレベルで済みます。

無線LANなしの環境、オフラインでOKが現実的!!

この「kocri」実は、去年の5月に開催された教育ITソリューションEXPOで初めて見てすごくいいと思ったのですが、当時ブースで聞いた説明では「Apple TVとiPhoneが同一Wi-Fiネットワーク上ある必要が…」ということだったので、と、その点が最も「非現実的」だと感じていたのです。

ですが、改めて確認したところ、オフラインで利用可能になっていました。この「kocri」は、Apple TVとiPhoneを「AirPlayミラーリング」でつなぐことで機能するのですが、それぞれの機器の世代とiOSバージョン条件がクリアできればP2P(ピア・ツー・ピア)という方式で接続が可能です。これによって、同一Wi-Fi上になくてもAirPlayミラーリングが可能になります。現在の「kocri」の仕様条件はP2P接続可能なものになっているので、オフラインでの利用が可能ということなのでしょう。

学校に無線LAN環境なんてないのが現実のところが多いと思います。また、あったとしてもセキュリティ上、自宅から持ち込んだApple TVとスマホがネットワークに入れないことも多いでしょう。でも、これなら大丈夫、使えます。

もちろん、パソコンからデータiPhoneに移すときは、有線でiTunes経由か、それぞれインターネット経由でDropboxにアクセスする必要はあります。でも、これを事前に済ませておけば、教室が完全オフラインの世界でも、利用できる、というわけです。

「ちょっと詳しいやる気のある先生が勝手に何か持ち込んで始めちゃった」が、学校を変えるケースは多いと思います。そんな「勝手」が十分可能なセッティングですね。

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kocriリーフレットより

適材適所の基本

ちょっと気をつけたいのは、このツールも適材適所である、ということです。

「kocri」はホワイトボードでも使えますが、例えば 「ホワイトボード+実物投影機+天井吊り下げプロジェクター」が教室に据え付けの場合は、パソコンも簡単につなぐことができるケースが多いでしょう。その場合、わざわざ「kocri」を使う必要はないよね、ということにまず気づいて、パソコンの有効活用をするのが先でしょう。

PDFでもwordでも画像でも映像でも、パソコン経由でプロジェクターからじゃんじゃん投影して板書でどんどん書き込めばいいだけです。

「教室にスマホ」問題が一番の壁かも

むしろ、一番気になるのは、先生が教室でスマホを操作する動作や目線かもしれません。

デジタルネイティブ世代だからこそ、子どもたちはスマホは「アンオフィシャル」な場でやるもの、というマナーや「学校には持ってきてはいけないもの」という禁止イメージを強く刷り込まれています。そこへきて、学習のためとはいえ、先生が教室で皆の前でスマホを触る動作をすること自体が、何で先生が学校でスマホしていいの?というムードになる可能性はある。他に何のアプリが入ってるの?とか、そんなざわつきを生みかねません。

その辺をクリアするために、ケースカバーを工夫するなど「私物感」を出さない演出の方が重要かもしれません。スマホを見ている先生の姿が急に「私人」に見えてしまう可能性がある、というところを意識して、リモコンのように使う動作や姿勢を練習するのが意外と大切そうです。

そして、個人所有のiPhoneを使う場合、間違っても、授業中にプッシュ配信が表示されたり、電話を受けてしまわないように設定に気をつけなければいけませんね。

規格は十分確認を。「無料体験パック」で試しては?

なお、機器の規格やバージョンについては、十分公式サイトをチェックしてご確認ください。手持ちの機器がある方は無料アプリのダウンロードですぐに試してみることが可能です。ただし、「kocri」を継続的にサポートを受けながら便利に使うにはライセンス使用料がかかります。これはソフトウェアを含む総合的なソリューションサービスですから当然ですね。教科書や机や椅子を買うのにをお金がかかるのと一緒です。

うれしい無料体験パックもあるので(2/29現在まだ受付中)、この機会にぜひまずは試してみてはいかがでしょうか?

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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