「Osmo」がすごい〜画面モノなのに画面の外に子どもを連れ出すそのカラクリ

子どもがタブレットで遊べるアプリはいろいろありますが、ゲーム性が高くて結局、画面の世界にのめり込んでしまうのを残念に思うことがよくあります。そして、アプリの多くが「リアルにできることを画面内でやる」というシンプルな代替手段か、もしくは「リアルにはできないことをかなり直球のメタファーで表現する」ものです。

画面の中だけで遊ぶか、外遊びか、の2択ではないはず

以前、『「メタファー」の通じない世代』で触れた通り、本物を触る/知る前にメタファーに触れてしまうという逆点現象が、今の子どもたちには益々増えています。

画面内で同じことができるのだとしても、タップをしたり画面をなぞったりタッチすることの手軽さよりも、子ども達には、まず、リアルなものを触って確かめることもフルに経験してほしいと思います。

だから自然体験だ!外に出よう!というのは極端な話で、それはまた別の話。そちらは全く別次元で大切なことです。これを引き合いに、テクノロジーを否定することはありません。

「画面ありきの仕組み」なのに「画面の外」が主役の「Osmo」

そのあたりのもやもやをすっと具現化してくれたのがこの「Osmo」です。「Osmo」はアメリカのカリフォルニアにある会社が作ったiPad専用のツールで、iPadを立てる白いスタンドと、上部のカメラ部分にセットする赤いパーツとが基本のセットになっています。Osmoで楽しめるプログラムは現在5種類あり、専用の無料アプリをダウンロードして使います。

「Osmo」がすごい〜画面モノなのに画面の外に子どもを連れ出すそのカラクリ

最大の特徴は、どのプログラムも画面内だけでやるわけではない、ということ。
基本的に、どれもOsmoを置いた手前のテーブル上で、なんらかの作業をします。その動作をOsmoがカメラで自動的に判別して画面から随時フィードバックしてくれます。

例えば「Tangram」は、シルエットパズルですが、画面の中でパズルをやるわけではありません。専用の平らな木製のシェイプパーツを机の上でいろいろに組み合わせて並べ、画面が示す見本と同じ形状を作るのがミッションです。

同じ形が出来上がるとOsmo が自動的に判定してクリアできるので、次々に別のシルエットに選んでチャレンジしていきます。裏返したり向きを変えたり、どう組み合わせたら同じ形を作れるか、これがレベルが上がると大人でもちょっと迷ったり、意外と難しくなっていきます。子どもにとっては図形認識のとてもいい頭の体操になります。かつ、面白い。

「Osmo」がすごい〜画面モノなのに画面の外に子どもを連れ出すそのカラクリ

左がTangram、右がWords

5つの個性的なプログラム

Tangramの他にも、こんなプログラムがあります。

Words:英語のつづり練習になるゲーム。アルファベットのタイルを並べます。
Newton:重力を意識して経路を作って楽しむゲーム。とてもクリエイティブです。
Masterpiece:画面に表示した画像(写真でも絵でも)を紙に手描きで簡単にトレースできます。描いているところを同時にタイムラプス撮影してくれるのがまた面白い。
Numbers:数字のタイルを並べて、楽しみながら計算に慣れるゲーム。

2014年の発売当初はTangram,、Words、Newttonでスタートしましたが、2015年春にはMasterpieceがアプリとして追加され、秋にはNumbersが追加発売されました。NewtonとMasterpieceはOsmo本体+無料アプリのみで、専用アイテムは使用しません。

手指を動かすことの効果〜協調運動の訓練にプラスの可能性

どれも画面の中で操作するのと違い、自分の手指でパーツを動かし並べることは、幼いうちは特に手指への刺激になりますし、頭で考えたことを手に伝えるいいトレーニングにもなりそうです。

年齢が進んでも、協調運動が苦手な子どもには特に、課題のレベルを抑えてゆっくり楽しんでやることで、いい訓練になりそうな気がします。作業療法や、発達障害/学習障害/知的障害等、特別支援系の教育に関わっている指導者の方は、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

細部まで妥協しないクオリティの高さ

Osmoの魅力はそれだけではありません。説明的でない直感的な操作画面、課題の配置のされ方など、画面内の処理がとても考えられていて、英語が得意でなくても使い勝手に困らないレベルです。だからもちろん子どもにも使いやすい。そして、ちょっとした音や、デザインなどがとても心地よくできています。さらにスタンドなどの本体の作りはもちろん、パッケージの形状や紙質、個々のプログラム用のアイテムの手触りなども十分に検討されていて妥協が見られません。

「所有していたくなる」魅力を持っています。

iPadのテクノロジーを最大限に利用しながら、「画面の外」で作業することを前提に作られたこのOsmoの開発精神に大いに共感します。

動画だととてもわかりやすいので、OsmoのオリジナルのCMをご紹介します。

そして、本家のサイトはとてもわかりやすいので、ぜひチェックしてみてください。

Osmo公式サイト

尚、購入は本家サイトや各リテイラーからできて、公式サイトでは、Starter Kitが79USドル、Genius Kitが99USドルで販売されています。日本への配送もOK。2016/10/21追記:現在日本のアップルストアで購入可能です。アプリケーションもこの記事の時の5から8個に増えています。詳細はこちらの記事をご参照ください

ただし日本語版はありません。《2016-5/26修正》各アプリが他言語対応し日本語にも対応しました。対応状況などはFAQをご参照ください。

iPadを所有していることが前提なので、普通に考えるとかなり自信のある挑戦的な売り方に感じるかもしれませんが、それだけ、すみずみまで考えて作られて自信とポリシーを持って世に出している、とも言えます。他にはないツールです。

ご参考:サポートされているiPadはiPad Pro以外のカメラ付きiPad
《iPad 2, iPad (3rd Generation), iPad (4th Generation), iPad Mini, iPad Mini 2, iPad Mini 3, iPad Mini 4, iPad Air, iPad Air 2》

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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2件のフィードバック

  1. 2016-05-26

    […] 以前ご紹介したOsmoというiPad専用のツールに、本日、新しいアプリケーションが追加されました。 […]

  2. 2016-10-21

    […] と画面が連動するのはやってみるととても不思議で面白く、画面モノでありながら、子どもを画面の外に連れ出す仕掛けの大注目のツールです。詳しくはこちらの記事もご参照ください。 […]

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