プログラミング教育の重要キーワードが続出!〜「未来の学びコンソ―シアム」設立総会

2017年3月9日(木)に、「未来の学びコンソ―シアム」設立総会が開催されました。プログラミング教育の実施に向けて、文部科学省、総務省、経済産業省の三省が連携して、学校関係者や教育・IT関連の企業・ベンチャーなどと共に、現場のニーズに応じた教材開発や学校における指導のサポート体制を構築するために設立されました。(賛同人一覧

プログラミング教育実践者の言葉にヒントがたくさん〜「未来の学びコンソ―シアム」設立総会

総会の後半に設定されていたプログラミング教育の先行実践者の方々のトークセッションが、足早のプレゼン会になってしまったのが少し残念でしたが、短い発表ながらそれぞれ印象的だった部分をご紹介したいと思います。(文中のお名前とお立場は当日配布の資料より。)

教育委員会の積極的な動き

戸田市教育委員会教育長 戸ヶ﨑勤氏からは、現在の取り組みの紹介に加え、教育委員会が率先して産官学民のリソースから情報収集をし教材を試して、学校にメニューとして提供できるくらいの形を目指し、各学校のカリキュラム・マネジメントを支援したいという構図が示されました。教育委員会の強いバックアップ体制があってこそ、各学校が動きやすくなるということを、学校側からではなく教育委員会側からの主張として聞くのは、むしろ力強い説得力を感じました。

小中系統的な視点で捉える

相模原市立総合学習センター指導主事 渡邊茂一氏からは、小中をひと続きに考え、各段階でのプログラミングの学びを捉え直すという視点が示されました。中学では現状よりも一歩高度な題材に移行する必要性を検討中。また、小学校でプログラミングの学びについては、
(1)プログラムの仕組みの理解と制作、問題解決へと活用する学習
 →プログラムを見つける、さわる、つくってみる
(2)論理的思考を育てるツールとしてプログラミングをする学習
 →発達の段階に応じ各教科の論理的思考を育てる場面でプログラミングをツールとして活用
と分けて捉えることをクリアにした上で、授業事例の紹介などがされました。
「プログラミング」のひと言で済ますのではなく、この(1)(2)が定義分類されてクリアになっている点に安定感を感じました。

来年度よりタブレット端末が全児童に!

渋谷区教育委員会教育長 森富子氏からは、まず、来年度より渋谷区の小学校全児童にタブレット端末が用意され自宅に持ち帰ってよいスタイルで活用が始まるという話がありました。(導入は9月からを予定。)学校現場が確実に変化していくのを感じます。今年度、スクラッチでのプログラミング学習などに先行して取り組んできた代々木山谷小学校 執行純子校長から、子どもたちに自然と協働的な学習の様子が見られた、というコメントがあったのが印象的でした。

渋谷区の全児童一人一台体制が珍しいこととして受け止められるくらい、まだ日本の教育現場への機器の導入は遅れているわけなので、もっと危機感を持たないといけないのかもしれません。この体制は、学習面だけでなく、学校と子ども、学校と保護者の連絡などコミュニケーション面でも大いに活用できる可能性があり、校務の面でも先生の手間を減らしながら保護者との連携を密にすることもできるはずです。大いに期待したいところです。

プレゼンテーションが重要

古河市教育委員会参事兼指導課長 平井聡一郎氏からは、古河市の積極的な取り組みが紹介されました。先月開かれたばかりの「古河市教育ICTフォーラム」の様子も紹介される中で最も印象的だったのは「プレゼンテーション」を非常に重視しているという点です。「主体的で対話的で深い学びのゴール」でもあるという位置付けで、子どもたちが人前で発表することをとても大切にしていました。

作るものの質や考えが優れていればそれでいい、というのではなく、人前で魅力的に説明できる、という能力は、ますます重視されるはずです。大きな声で話す、下を向かずに堂々と立つ、など簡単なことからでいいので、プログラミングに関する活動でプレゼンテーション力を求められるのは、とてもいいことだと感じます。

カネ、と、ヒトを!!!

NPO法人CANVAS理事長 石戸奈々子氏は、15年のプログラミング教育支援の取り組みについて概観しながら、学校教育が「やっとここまできた」と感激を表現します。その上で、力強く「プライオリティを上げてほしい」「お金と人材をかけてほしい」と主張しました。カネ、ヒトをかけるという指摘は当たり前のことのようでいて、教育現場側からはなかなか上がってこない声のように思います。長い活動の実感から絞り出された言葉として重く受け止める必要があると感じます。

無償の知の共有やボランティアだけで済まさない仕組みも

先行する目立つ事例というのは、実証実験の対象で何らかの民間企業や協力団体がアイディアやヒトやモノを提供しているケースも多いわけですが、特定の協力を得られた学校だけがスムーズなプログラミング教育ができるというのでは意味がありません。

費用をかけられる学校でないと学びが得られないということでは問題です。

一方で、教育の世界はボランタリーなイメージが強いですが、ハード機器だけでなく、ソフトウェアや教材、優れた指導者、多数必要なサポートスタッフに対して正しく対価が払われる仕組みや習慣がない限り、ボランティア人材や社会貢献に余裕のある企業しか教育に手を貸すことができないままになってしまいます。

「プログラミング教育には民間の力が必要だ!」と盛り上がることを現実に支えるのは、教育に国や自治体の費用が十分に確保され、正しく現場で使われることだ、という側面も、改めて確認する機会になりました。

プログラミングの分野からでも、学校現場に風通し良くいろいろな分野からの人材や手法が入り込んでいくことは学校の可能性を広げるきっかけになるはずです。子ども達の学びを育てるために各分野の力がプラスに合わさることを願います。

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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