実物投影機がホコリをかぶっていませんか?ー 電子黒板で盛り上がる前に

実物投影機(書画カメラ)、というのをご存知でしょうか。

昔OHPというやつがありましたね。透明シートに書いたものを拡大してスクリーンに投影するものです。
wikipediaのOHP説明

これが大幅に進化したような機器です。立体物でも書類でも、手元にあるものをそのまま拡大してスクリーンに映し出してくれます。もちろん、出力先をテレビ画面にすることも。

実物投影機

wikipediaの書画カメラ説明
例:メーカー(エルモ)の製品紹介ページ
例:メーカー(エプソン)の製品紹介ページ

もう目新しくないのか、最近は「電子黒板導入」や「一人一台タブレット端末の導入」ばかり話題になりますが、この実物投影機、十分すごいのです。もしこれが使われずに教室でホコリをかぶっているとしたら、きっと電子黒板が導入されても、ホコリをかぶるんじゃないかと思います。

例えば東京都新宿区がホームページで公開している情報によれば、新宿区では4年前の平成23年までにすべての学校・各教室に実物投影機が導入されています。少なくともこれらの教室では、「もうけっこう前」に導入されて当たり前に教室にある機器なわけです。

上記によれば、スクリーン兼用ホワイトボード、教育用ノートパソコン、短焦点型プロジェクタも同時に各教室に整備されており、これだけあったらかなり工夫した授業が展開できそうです。

このセッティングの場合、黒板が既にホワイトボードに置き換わりスクリーンを兼ねているので、電源を入れるだけで、通常の板書とシームレスに時間のロスなく実物投影機を活用することができます。

実物投影機とスクリーンや大型ディスプレイをがらがらと準備して、「今日は実物投影機を使った授業です!」みたいになってしまうと、もう、使うこと自体が目的みたいになりがちですが、こんな風にさらっと使える環境があったら本当に活用範囲が広がります。もちろん、設備が整っていなくてガラガラ準備しなければいけないとしても、使い道は十分あります。

具体的にどんな活用ができるでしょうか?

小さなものを大きく〜拡大

小さくてわかりにくいものを大きく写し出す、というのは、まず基本。手元の細かな実験手順を説明する、定規のような小さな道具の使い方を実物で示す、折り紙の折り方を見せる、葉っぱなどの小さな資料を拡大して見せる、水彩絵の具と水の加減をデモする、鍵盤ハーモ二カの指使いを解説する、等々、いくらでも使い道があります。

皆で見る〜共有

全員が席を立って集まらなくても、印刷して配布しなくても、ひとつの資料を共有することができるというのも基本の活用法でしょう。先生がその場で子どもの作品や作図をピックアップして皆に見せて解説するのはもちろん、子どもが自分の意見を発表する際に自分のノートを表示しながら説明する、ということもできます。授業外ですが、小さな絵本を大勢に読み聞かせしたいときに利用することも。

準備時間短縮に貢献

単に資料を「拡大」「共有」するために、通常であれば、先生は模造紙やその他の素材で拡大教材を作ったり、事前に写真に撮ってデータをPCに入れてPCをプロジェクタにつないでスクリーンに映す準備をしたり、原稿を作って人数分印刷したり……と、授業の事前準備に結構な時間が必要です。でも、この実物投影機があれば、それらの作業時間を圧倒的に省くことができます。

カメラの認識範囲にものを置くだけなので、授業中に子ども達を待たせるちょっとした空白時間(これ、ときに致命傷になる気が……)も減らせます。

これらの「拡大」「共有」がどれだけ便利かは、普段授業をしている先生方であれば、プロの視点でいくらでもアイディアが出てくるでしょう。そして、ここまでは、もう、王道の当たり前の使い方かもしれません。

もうひとつの使い方〜子どもの理解を助ける

さて、注目したいのは、もうひとつ別の視点、「子どもの『理解』を助ける」という使い方です。

実はこれが、一番可能性の広がる使い方でもあり、先生方の個性が発揮できるところだと思います。私は初めて目撃したとき、一瞬、「なぜこんなことをするんだろう?」と思ったのですが、すぐに、その効果に思い至り考えを改めました。

具体的にどんな使い方のことなのかは、次の記事『子どもの理解を「助ける」実物投影機の使い方とは?』でご紹介したいと思います。

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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3件のフィードバック

  1. 2015-02-03

    […] 前回の記事「実物投影機がホコリをかぶっていませんか?ー 電子黒板で盛り上がる前に」は、実物投影機(書画カメラ)について、使わなければ勿体無いし、あれは立派なICTツールです […]

  2. 2016-02-29

    […] 以前、実物投影機についての記事で、「実物投影機+ホワイトボード」の環境があれば、そんな風に教科書の文章や、ノートのマス目やライン、図形になどをホワイトボードに投影し、 […]

  3. 2017-02-18

    […] [関連記事] 実物投影機がホコリをかぶっていませんか?ー 電子黒板で盛り上がる前に 子どもの理解を「助ける」実物投影機の使い方とは? […]

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