中学校「技術」新学習指導要領プログラミング追加内容対応の教材3種〜ネットワーク・双方向性を扱う

中学校の新学習指導要領は2021年度より全面実施となります。中学の「技術・家庭科」の「技術」分野で扱うプログラミングの内容が、大きく再編されます。プログラミング教育は、2020年度から小学校で始まったことが注目されていますが、中学での変化もかなり大きなものです。

具体的には、従来からある「計測・制御のプログラミングによる問題の解決」に加え、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」が学習内容として追加されます。(→文部科学省の学習指導要領掲載ページ/→2021年度全面実施の中学校学習指導要領PDF

今は小学校を意識したプログラミング教材が増えてきているので、「計測・制御」だけであれば、教材の選択肢はむしろ幅が広がったと言えるでしょう。ただし、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツ」に関しては、学校のネットワーク環境でどのようにこの題材を扱うかなど、判断が難しいところです。また、それに特化した教材はまだ非常に少ないのが現状です。

ここでは、中学校の新内容「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツ」に対応した教材ををまとめてご紹介します。

プログル技術

みんなのコードによる教材。ウェブブラウザでアクセスできる無料教材で、インターネットにつながる環境さえあればすぐに使えます。チャットの仕組みを部分的にプログラミングする体験をしながら、サーバーとクライアントとの通信の仕組みをイメージできます。

プログラミングはブロック型のビジュアルプログラミング方式なので操作は簡単。生徒が画面からの指示に従ってあるていど自習型で進められる教材として作られていて、プログラムも触るべき所しか見えないようになっていて先生にとってとても便利な作りになっています。生徒の学習進捗チェックなど管理機能も充実。

みんなのコード「プログル技術」

詳細は、狩野がインプレスに書いた記事でレポートしたので参照してください。

アーテック

アーテックが2020年のEDIXでデモンストレーションしていたのは、アーテックロボ2.0を使った指導案。Studino:bitというアーテックロボ2.0のコアをWi-fi環境で相互に通信させ、チャットのような仕組みを作るというものです。専用プログラミングアプリの「Studuino:bitソフトウェア」はダウンロード型で、Scratch3.0をベースに開発されています。ブロック型のビジュルプログラミング方式ですから操作は簡単です。

中学校のプログラミング新分野 アーテック教材
中学校のプログラミング新分野 アーテック教材

他にも、アーテックロボのプログラミングに使う専用アプリ「Studuinoソフトウェア」を使って、ロボット無しで学習する指導案がサイトで公開されています。ダウンロード型でScratch1.4をベースに作られているアプリなので、通信はScratchのMeshと呼ばれる機能を使っていると考えられます。

いずれも、先生が全体に指導するための指導案とサンプルプログラムです。生徒の自習型教材ではありません。

アーテック教育機関向け教材の関連資料ダウンロードページ
(無料で公開されている。最下部に「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」の指導案が掲載)
アーテックロボ2.0

ライフイズテック

EDIXでもうひとつ見つけたのが中高生向けプログラミング教育サービスのLife is Tech!(ライフイズテック)による教材。もともと、同社には「MOZER」というHTML&CSSを学ぶ教材がありましたが、これが学校教育向けにアレンジされて提供されています。ブラウザで利用できて対話型で誘導してくれるので生徒が自習型で進められる学習教材です。ここに、中学の「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」に対応する内容が組み込まれました。

具体的には、ホームページ作成の途中に、パンの名前を入力すると焼き上がり時間が表示される仕組みを構築するステップがあります。おそらくJavaScriptでデータを外部データを読み込む部分を記述するのではないかと思われます。他の2社とは違うアプローチで、ホームページ制作の流れの中でネットワーク、双方向性の要素を学びます。

中学校のプログラミング新分野 life is tech!教材
中学校のプログラミング新分野 life is tech!教材

→「ライフイズテックレッスン
(有料だが無料体験等あり。中高向けの教材サービスで高校用に別の教材も紹介されている)

以上、教材としての選択肢は少ない状況ですが、もう2021年度の中学校新学習指導要領全面実施は目前まで来ています。2021年度から技術でプログラミングの新分野を実施する準備はできているでしょうか? GIGAスクール構想のひとり1台端末の整備状況や学校のネットワーク環境などに応じて使いやすい教材や指導内容を検討してください。

<関連記事>
神奈川県相模原市の中学校で、2018年の時点でこの改訂を前提に実施された先行授業の様子を狩野がレポートした記事があるので、あわせてご紹介しておきます。「ネットワーク」に「双方向」!? 倍増するプログラミングの学習内容に中学校の現場はどう対応するのか
――相模原市立相原中学校 技術科公開授業レポート
[インプレス/こどもとIT]

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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1件の返信

  1. Yasu より:

    小学校では、プログラミング的思考。中学校では、双方向性のあるコンテンツ。理想は大きくも、コンピュータの操作、キーボード入力、データの管理を学ばない小学校。プログラミング言語を扱わない、中学校。と色々な言葉で書き消されている。小学校段階で、ワープロやプレゼンテーションを国語科のカリキュラムに位置付ける。ローマ字を学習することと共に、文章入力もやる。他の教科で、活用も積極的に教える。
    キーボードも使えない。データの保存もできない状況では、プログラム以前の問題である。
    小学校で、ビジュアルプログラミングが流行しているが、子どもは、適当な動作を作っているだけで本質的な理解に繋がっていない。私の指導がダメなのかもしれないが、スクラッチにしても、何を基礎として教えればいいのか分かりにくい。
    多くの課題がある中で登場しているプログラムをどのように指導するのか思考錯誤の日々である。

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