特撮ヒーローを題材に家庭でPBL風!パソコンをクリエイティブ&ロジカルな用途に使うきっかけに

子どもがパソコンに向かってばかりいると、「またYouTubeばっかりじゃないの?」などと、何をやっているのかつい不安になったり画面をのぞきこみたくなったりしがちです。でも、「そろそろやめたら?」「いいかげんにしなさい!」などばかりだと、言われている方も気分は良くないし、『パソコン=親に文句を言われる』なんて図式になってしまったら残念なこと。パソコンのおかげでできることや助かることはたくさんあり、今多くの人がパソコンがなければ仕事にならないのと同様、本来子ども達にとっても必須のツールのはずです。

好きなテーマでアウトプットする機会を

私は自らパソコンを使う仕事ばかりなので、子どもがパソコンを使うことは大賛成ですが、遊びや情報の消費にばかりつかっていると、やはり気になってしまうもの。そもそもそれだけに使うのではもったいない。もっとクリエイティブなこと、ロジカルなことに手足のように使い倒してほしい。とはいえ、ほかの使い方や便利さを教え込むというのも違うし、子ども自身がほかの使い方をしたくなるきっかけが必要です。

時間がたっぷりあった長い休校期間あたりから、息子がどうやら特撮戦隊ものについて歴史を振り返って詳細に調べているようだったので、それならば、と、かねてから気になっていたことを調べてもらおうと仕事を依頼しました。パソコンで好きなことを調べるのは基本的な検索力がアップするのでとてもいいと思うのですが、そこで情報を消費するだけでなく、できればそこからもう一方踏み込んで、アウトプットする機会を持ってほしいもの。

依頼はこんな内容にしました。

(1)歴代スーパー戦隊の女性戦士の「色」を調べてまとめる
(2)歴代スーパー戦隊の男性戦士の合計と女性戦士の数を調べてまとめる

データの効率よい扱い方を表計算アプリで

パソコンのスキル的には、以下あたりを浅く経験することを目標に、使い方はざっと教え、細かい作業は本人に。なお、データの集め方はここでは厳密さは求めず、自分で調べて集めることだけを重視です。

  • ウェブで見つけた歴代のスーパー戦隊の放映履歴一覧を表計算系アプリ(Numbers/Excel)にコピー&ペーストして成形する。
  • 調べた女性戦士の色と戦士数の男女人数をシーズンごとに入力していく。
  • 簡単な関数(SUMだけ)と数式(+だけ)で集計に必要な合計を出す。計算で出る数字は極力手入力せずに式で入れる(人はたいてい間違えるので)。
  • プレゼン系アプリ(Keynote/PowerPoint)でグラフ化する。

これを、「ExcelとPowerPointの使い方を覚えよう〜」などと持ちかけると、絶対に子どものやる気は出ませんが、子どもが好きなことのリアルデータでやると、自然と取り組めます。

調べたことをテキストで箇条書きにして、いきなり手計算で数字を数えようとしたりするかもしれませんが、そうしたステップをひとつひとつ見守った上で、表計算アプリで数字を扱う記録方法をアドバイス。どれだけ楽で速く安全にデータが集計できるかを実感する機会にします。

こちらは息子が作ったグラフ。データは「子ども調べ」なので、参考程度にご覧ください。

スーパー戦隊でPBL風

スーパー戦隊でPBL風

女性戦士比率はとても低くて、色もステレオタイプでピンクとイエローが圧倒的に多いことが可視化できました。聞く限りでは、女性戦士のピンクのキャラ設定とイエローのキャラ設定もほぼ固定的な印象です。

発展系!リアル社会のジェンダーギャップを知る

そして、ここからが発展系。その「女性比率」は、リアル社会ではどうなのか、いくつか調べてもらいます。ここは本人が乗らなければ家庭では話題の切り口程度で、親が調べたデータをさらっと見せても構わないでしょう。

  • 国会議員の女性比率
  • 上場企業役員の女性比率
  • 好きな会社の社員の女性比率

興味のある方はぜひ調べてみてください。あぁ、リアル社会の方がさらに低くてびっくりだったね……というジェンターギャップの学びのおまけつきです。

戦隊ものの女性比率と同じ構造をリアル社会とつなげて見るというあたりが、この調査仕事依頼のゴール。日本のジェンダーギャップ指数が世界的に見て非常に順位が低いというデータを、戦隊ものの文脈で見ると実感値が上がります。

「ほかの色もいるけれどびっくりするほどピンクとイエローが多いね」……色と性別の関係や性格などのイメージが固定されやすいことも気付いておきたい重要なポイントです。

子どものリアルな社会では、クラスには男女半分ずついて、責任ある役割につく人は男女どちらということもありません。しっかり者やリーダータイプは女子にも男子にもいる。どのタイミングで/なんでこの比率がここまで極端になるのか、興味を持って欲しいなと思います。

ちなみにチームのリーダーが女性戦士だったのは過去1回あるようです(1994年2月〜1年間/子ども調べ)。ちなみに1993年中学校、1994年高等学校で家庭科が男女必修化されているので、そこに至る時代観が反映されているのかなと思ったりもするところですが、どうだったのでしょうか。

家庭でも、こうしてやってみるとPBL(Project Based Learning:プロジェクト型学習)的な雰囲気くらいは出たかな……。子どもが本当に好きなことを題材にすれば、きっと、自然とただ楽しみながら、パソコンの使い方も社会的な学びも深めるチャンスになると思います。自由研究なども、もともと子どもが大好きなことを徹底的に深めるというやり方にすると掘り下げ方やアウトプットの質が高まるかもしれませんね。

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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