「読み書き困難」をICT活用でサポートするインクルーシブ教育がよくわかる記事3+簡単アイディア2

「読み書き困難」という状況で人知れず困っている子どもたちがいることを知っていますか? 漢字が極端に苦手だったり朗読が極端に下手だったりという状況として表出するので、たいていは「勉強/練習不足」と受け止められてしまうため、自己肯定感を下げ、学習は遅れる一方という悪循環に陥るケースが多くみられます。この困難さに気づきICTの力でサポートすることが有効であることが数々の事例と研究で示されてきました。

今年6月から8月にかけて、「読み書き困難」に関するインクルーシブ教育をテーマにインプレスで3本の連作記事を書いたので、まとめてご紹介します。基本的な知識から先端事例まで、とてもわかりやすいのでぜひチェックしてみてください。過去にICT toolboxで書いたライトなアイディア記事もあわせてご紹介します。

(1)そもそも「読み書き困難」て何?

「読み書き困難」がどんな状態か、どうしたら気づけるのかということをご紹介します。病院で学習障害(LD)と診断されてからサポートをするというのではなく、診断よりも実際の困りごとを判定して、困っていればサポートするという素早い対応をすること、また、診断がつくほどではない症状の子どもも含め、幅広いグラデーションの困りごとに対応することが大切という基本的な姿勢がよくわかります。東京都教育委員会から出ている読み書きアセスメントを開発した元東京学芸大学教授小池敏英先生のインタビューを交えて。

(2)教室や授業という「場」の側の環境をICTの力でインクルーシブな状態にする

パソコンなどのICTツールを活用し、教科書は「読んでも聞いてもいい」、ノートは「書かなくてタイプしてもいい」というように、複数の手段をクラス全員に保証するという方法でインクルーシブ教育を実現しようと取り組んでいるクラスの事例を紹介しています。子ども達が、より自分が快適ではかどる手段を個別に選んだとしても、一斉に授業や学習を進められるヒントがあります。アセスメントで支援が必要と判断された子ども以外にも、救われる子がいることもわかってきました。クラスや授業の側をインクルーシブにするという新しい取り組みです。

(3)問題が顕在化した子どもの側から個別支援として代替手段を身につける

現在はまだ(2)の例とは逆で、困難のある子どもが代替手段を使ってマジョリティ向けの授業に混ざれるようにするという支援の方が主流です。困りごとが明らかになった子どもの側から個別に支援していきます。この支援によって、いかに学習機会を失っていた子どもたちが学びを取り戻したかという事例を紹介しています。読み書き困難な子でも、訓練すればある程度ゆるやかにできるようになるものの、がんばっても通常の水準に追いつけるわけではないのが現実だそうです。だからこそ、代替手段を身につけて、学習の中身に入っていく必要があるし、読み書きが困難でも学習の中身は他の方法で理解できるということがよくわかります。

(4)簡単に家庭学習で試せるICTを使った「書き」のサポートアイディア2つ

こちらは、気軽に家庭で試せる「書き」のサポート手段。以前ICT toolboxで書いた記事なので、あわせてチェックしてみてください。もっと身近な話題として、具体的にどんなことができるのかをイメージできる内容です。


ICTの力を活用して積極的に代替手段として使い、多様なアウトプット/インプット手段を子ども達に許容することが、様々な特性の子どもたちを包み込む教育のひとつの形になるということを、ぜひ知ってもらえたらと思います。

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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