ヒーローに変身!SOZO.Edのクリエイティブなワークショップ〜必然性を設定する大切さを実感
プログラミングやコンピューターの活用というと、「学校の先生は苦手な分野」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、教育のプロである先生方自身がコミュニティを作り、共に研究やワークショップを実施している例があります。東京都内の小学校から高校までの先生方による「SOZO.Ed(ソウゾウエド)」もそのひとつ。ICT、Creative、Educationをキーワードに、さまざまな活動をしています。
2019年3月24日、そのSOZO.Edによる「そうぞうとあそびのクラスルーム2」が聖徳学園中学・高等学校ラーニングコモンズを会場に開催されました。embot、Viscuit、LittleBitsとMESH、映像作成アプリ、電子工作パーツなどを使ったワークショップが多彩に開催され、楽しくクリエイティブな時間が生まれました。
この日のワークショップのひとつ、電子工作パーツで変身アイテムを作ろうというコンセプトの「へーんしんっ!!憧れのヒーロー&ヒロインになって、モンスターをやっつけろ!!」をご紹介しましょう。このワークショップは千葉県柏市で子ども向けのクリエイティブラボ「VIVISTOP KASHIWANOHA」を運営するVIVITAの協力で進行しました。
使いやすい電子工作パーツで直感的にプログラミング!
活用した電子工作パーツはVIVISTOPオリジナルのVIVIPARTS(未発売)。プログラミングはタブレット端末からオリジナルのプログラミング用アプリで無線で行います。アプリは指示ブロックを線でつなぐスタイルのビジュアルプログラミングなのでとても直感的でわかりやすく、小学校低学年でも扱えていました。ボタンや加速度センサーなどの入力系パーツと、LEDや文字を表示できるLEDマトリクスなどの出力系パーツを自由に組み合わせて変身アイテムを作ります。変身といえばサウンドが重要な要素ですが、パーツ側にスピーカーはないので、音はプログラミングするタブレット端末の方から出ます。
白衣を着たVIVITAのスタッフから基本的な使い方を教えてもらうだけで子ども達はどんどん手を動かして試していきますが、作り始める前に「まずは変身ポーズを考えよう」、と進行の先生が語りかけ、変身ポーズのプランを練ることになりました。
とはいえ、すぐに動いてポーズを考える子ばかりではなく恥ずかしそうな様子の参加者も。そこはスタッフが個々に寄り添いフォローしながら、ベルト型か腕につける型かを選ぶなど基本方針を決めてから具体的な制作に入りました。
参加した子ども達は、ヒーローの変身に関してどの大人よりも詳しい様子なので、一旦作り始めたらそこからは強い。各自のイメージ通りにどんどん作っていきます。あちこちでかっこいいサウンドエフェクトが鳴り響く中、自分の思いを形にしている様子です。
途中で変身のテストをしてみる参加者も。
いよいよ変身ポーズの発表!シーン設定が絶妙
たっぷり時間を使って作ったら、いよいよ発表の時間。この状況設定がとても上手で、あっという間に子ども達の気持ちをとらえ、巻き込んでしまいました。なんと、VIVITAのスタッフが悪者に変身するアイテムを手にして敵キャラになってしまったのです。
参加者は自分の作った変身アイテムで華麗に変身し、VIVIPARTSで作られた攻撃用のアイテムを受け取って敵を倒します。敵キャラの演技が雰囲気を大いに盛り上げ、子ども達に声をかける進行のスタッフの真剣度も絶妙。ここまでの流れが本当に素晴らしく、見守る保護者の側も、おかしくて楽しくて仕方がないという気分になっていました。各自のプログラムした端末から出るサウンドはスピーカーから出るようにセッティングしてあり臨場感も抜群。透明スクリーンに攻撃のエフェクトが映写されるという徹底ぶりです。
VIVITAが公開している動画があるので、ぜひチェックしてみてください。
いくら変身アイテムを作るというコンセプトとはいえ、子どもというのは積極的な子ばかりではありません。実は、制作中はまだ「作るのはいいけど発表はしたくない」とか「作るだけで発表するなら帰りたい」という様子の参加者が数人はいる様子だったのですが、全員が真剣に敵と戦い笑顔になり、本当に楽しい時間を過ごしました。もしも、「はい発表の時間でーす。順番にどうぞ」というやり方だったら、発表したがらない参加者も出てしまったかもしれません。
状況設定、動機付けの大切さ
今回このワークショップを見て強く感じたのは、場面づくりや状況設定が学びのシーンには本当に大切なんだな、ということです。楽しいものづくりのきっかけや、発表をするというきっかけの作り方次第で、ここまで子どもの達の積極性が変化するとは驚きました。
もちろん優れた教材も重要で、VIVIPARTSは未発売の段階とはいえ、様々な使い道がイメージできるとても可能性のあるツールだと思います。ただ、そうした優れたツールが仮にあったとしてもそれだけではだめで、作りたいという必然性、作ったものを是非見せたいと思う必然性を設計することが学びの密度をぎゅっと濃くしてくれるのだと感じました。
今回は、初めて会う人同士、初めて来る場所で異年齢が混ざった単発のワークショップですから、こうしたエンターテイメント性の高いセッティングが効果的でしたが、普段授業をしているクラスであれば、また必然性は別のところにあるでしょう。その場そのときのメンバーに合った状況設定が大切です。
SOZO.Ed(ソウゾウエド)の運営は全体としてあたたかいムードで、みなさんの子どもとの距離感が絶妙なのは、さすが現役の先生だからなのだろうな、と感じさせられました。
そして、今回ワークショップを一緒に進めたVIVITAが運営する「VIVISTOP KASHIWANOHA」はとても魅力的な空間。アナログからデジタルまで境目も垣根も無いもの作りが楽しめそうです。こんな場が地域にひとつずつあっていつでも子ども達が気軽に行けたらいいのにな、と思います。
子どもの「やりたい」を待つには時間も必要です。押しつけでも無理矢理でもなく、短時間で「やりたい」を引き出すのはなかなか難しこと。ワークショップをやるときのヒントが詰まった時間でした。