読み聞かせにもおすすめ!女性プログラマーが主人公の絵本〜「月とアポロとマーガレット」

今日は一冊の絵本をご紹介します。「月とアポロとマーガレット: 月着陸をささえたプログラマー」です。

これは、マーガレット・ハミルトン(Margaret Heafield Hamilton)というプログラマーのお話。マーガレットは、アメリカのアポロ計画で重要なソフトウェア開発の責任者となり、アポロ11号の月面着陸を成功させた科学者です。

月とアポロとマーガレット: 月着陸をささえたプログラマー

この絵本は二つのテーマがバランスよく全く押し付けがましくなくさらりと描かれていて、とても好感が持てました。私は小学校の読み聞かせボランティアをやっていますが、本を選ぶ時には、伝えたいことはありつつも、かといってあまり直接的なメッセージや教訓じみたものは避けたいと思っているので、この本は「適度」でとてもよかったと感じています。

テーマ1:ソフトウェア開発(プログラミング)に光をあてる

絵本では、プログラムがロケットを動かすのに重要な役割を果たし、危険を回避できたのはプログラムのおかげだったということが平易な文章で描かれます。

子どもたちがロケットの話でイメージするのはまずは宇宙飛行士だし、まず目がいくのはロケット自体の機構などハード面です。ソフトウェアの部分は、目に見えにくく、注目されることも少ない仕事です。でも、こうしてロケットの月面着陸という歴史的な花形の出来事を、ソフトウェアの側から注目することで、プログラミングの果たす役割をぐんとイメージしやすくなるはずです。

プログラマーが主人公ですから、今身の回りにある多くのものにはソフトウェアが組み込まれているという気づきや、それらをプログラムすることは大切で様々な可能性があるというメッセージにつなぐこともできます。

初期の大きな部屋いっぱいのコンピューターやコードをプリントした紙の束などが描かれているので、技術発展のスピードの速さを解説することもできるでしょう。同じコンピューターや有名なシーンの資料写真を同時に見せると、子ども達の興味がぐんと現実的になります。

月とアポロとマーガレット: 月着陸をささえたプログラマー

テーマ2:女性が仕事をすること

大前提として、コンピューターの黎明期にチームの先頭で開発の中心を担うなんてこと自体、男性であれ女性であれものすごいことです。

その役割を果たしたマーガレット・ハミルトンが女性だったということは、さらにすごいことで、この絵本の大きなテーマです。1960年代という時代を考えると、「女性だから〇〇になれない/ならなくていい」なんて思われている職業は多かったはずで、そもそも女性が働くだけでも壁の多い時代でしょう。

女性として、という点をおさえつつ、だからといってことさらに強調しすぎずに自然と描かれています。

この絵本の翻訳者鳥飼玖美子さんは、なんとアポロ11号が月面着陸した時に衛星中継の同時通訳を担当していたというから驚きです。鳥飼さんによる「あとがき」では、女性と男性、育児と仕事の関係についてとても簡潔で平易な言葉でメッセージが書かれているので、一部引用します。

『今でも、仕事か育児か、という選択を迫られる女性がいるのは残念です。子どもは男性にとっても大切です、二人で、周囲協力を得ながら、一緒に子どもを育てれば、マーガレットや私のように両立させることができます。
<中略>それぞれが持って生まれた力をのびのびと発揮できるような社会であって欲しい、と心から願っています。』(「月とアポロとマーガレット」あとがきより)

絵本の本文には、ここまでダイレクトなメッセージはありませんので、読み聞かせなどで読むときは、あえてあとがきも読んでクリアにしたり、本文だけ読んでふわりと感じ取れるようにしたり、年齢や対象に応じてどちらの方法も良いな、と思います。

科学絵本にはないプログラミングへの興味の入り口

プログラミングやコンピューターを扱った絵本というのは、科学絵本のように「説明や解説」が中心のものが多くなりがちです。でも、直接的な説明でいきなり興味を持てる子どもばかりではありません。

こんな風にひとりのプログラマー、ひとりの女性の姿、アポロ11号と月という具体的なテーマがあることで、興味の入り口がぐんと広がる可能性があります。

また、宇宙飛行士サイドから同じアポロ11号について語った絵本とセットで読むのも良いでしょう。
月へ アポロ11号のはるかなる旅 」は、淡々としていますが、宇宙飛行士の側、日の当たる側から描いているので、同じ出来事を全く違う方向から見ることができて面白いのではないでしょうか。

絵本は短くて読みやすくて、子どもたちがまだ知らない世界への小さな入り口をたくさん提供してくれます。絵本というと物語をイメージする方もいるかもしれませんが、科学系の絵本もとても読みやすくて面白いものがたくさんあるので、ぜひチェックしてみてください。

狩野 さやか

株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブやアプリのデザインを中心に制作全般を担当。ライターとしては、技術書籍の他、ICT教育やプログラミング教育について執筆している。著書に技術系で「見た目にこだわるJimdo入門」、子育て系で「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」。

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