小金井市立前原小学校 前校長 松田孝氏が語る「学校が変われない原因」と「変える手段」〜ICT活用とプログラミング教育の新刊

ICT活用やプログラミング教育の話題でよく登場する小金井市立前原小学校。東京の普通の公立小学校である同校がこうして注目されるようになったのは、2016年4月から2019年3月まで同校で校長を務めていた松田孝氏の存在があります。現在教育系シンクタンクの代表として活躍している松田氏の新刊「学校を変えた最強のプログラミング教育」(くもん出版)が刊行されました。

「学校を変えた最強のプログラミング教育」

新型コロナ対策での休校対応では、公立学校でのICT活用が世の中の常識に対して圧倒的に遅れていることが露呈し、普通のテレビニュースや大手の新聞が事例を報じ問題提起をする状況になっています。ICT活用の遅れはもともと教育現場が抱えていた課題だったものの、これまで、それはどんなに声を大きくしても、ICT教育に注力しているメディアや、大手メディアの一部の教育特集で語られるのが限界でした。その課題が、この3ヶ月にわたる休校で「見える化」し、今までよりも広く社会に知られ、多くの人が自分の子どもの問題として捉えるきっかけになったわけです。

学校の中に閉じていた子どもの学習の実態が家庭にありありと見えた休校期間。子どもに伴走しながら、パソコン等の活用に教育現場がいっこうに動けない/動かないことに素朴な疑問を感じた保護者のみなさんも多いでしょう。こうして課題感が一般の話題として共有され始めた今、この本の内容が響く人の層もぐんと広がりました。

完成度の高い教科教育研究がICTを使わない原因に!?

「プログラミング教育」がタイトルにありますが、むしろ、既存の教育現場が抱えているしがらみが何なのかを知ることができる本だと言えるでしょう。教育系の評論家や学者ではなく、校長の立場で現場で実感してきたからこその「学校が変われない原因」と「変える手段」がプログラミング教育の導入や実践の文脈で語られています

例えばこんな一説。
「しかし学習内容が新しくなっても、アナログ環境を前提とした教科教育研究の指導方法の呪縛から解放されない限り、ICT活用は知識や技能修得のためのアドオン活用、つまりは単なるつけ足しに止まってしまうのです。」(p.55)

松田氏は、教科教育研究の指導法方法は完成度が高く、情報機器を使う必要がない形で磨き上げられ確立しているので、それがICT導入を遅らせる一因になっていると指摘します。つまり、仮に学校に機器があっても先生が使わないという状況が生まれているわけです。ICT活用が進まないのは、「欲しいのに手に入れられない」というよりも、「欲しいと思っていない」状態がまず問題だという側面が見えてきます。

今回の休校対応では、オンライン化に向かえた学校があった一方で大多数の公立学校がオンライン化に十分な対応ができませんでした。また、オンライン授業ができた学校でも、そのスタイルが教室の授業のオンライン上での再現にとどまったケースが見られます。これらの現象は、ちょうど松田氏の指摘で説明できる部分が大いにあるのではないでしょうか。

「すごい!」「どうやったの?」「もう一度見せて!」を大切に

プログラミング教育や、ICT活用というと、その新しい「形」に注目が行きがちですが、松田氏の導入目的には、学び方そのものの変革が必要だという視点が一貫してあります。ただ、その変革は多くの「学校が変われない原因」から容易ではなく、まず形を整えるために、必要な機器を集めることから動く必要がありました。

以前小金井小学校の校長室を訪ねたとき、プログラミン教育に使えるマイコンからロボット系教材、ドローンまで、所狭しと並んでいて、少ない予算や外部の協力を徹底的に使って子どもの達の環境を作ってきたことがわかりました。だから余計にプグラミングミング教育の内容においても、何を使っているかという「形」や「物」が注目されがちですが、注目してほしいのは、その実際の授業スタイルの方です。前原小でプログラミング教育を行うときには、正解を教える学びではなく、「すごい!」「どうやったの?」「もう一度見せて!」の3つの「魔法の言葉」を大切にしたと言います。

学びの形を変えることと常にセットであるということが、今後全ての学校に求められるICT活用でも重要だということが確認できるでしょう。

松田氏は、しなやかにやわらかく土台を変えていくというよりも、高い壁と堅い土台を同時にガンガンと砕きながら新しい形を同時に作っていくタイプの改革者というイメージ。この本ではそんな飾らない様子も語られています。

「前原小らしさ」の原点を作った松田氏が、「学校が変われない原因」をとう捉え、どう変えてきたのか。今の煮え切らない学校のICT化の流れにもやもやを感じる方にはきっと何かヒントになることがあるはずです。

学校を変えた最強のプログラミング教育」(くもん出版)
小金井市立前原小学校前校長/合同会社 MAZDA Incredible lab CEO松田孝著

第1章:今の学校は子どもたちの未来に責任をもてない
第2章:変わらない学校、変われない学校
第3章:プログラミングで見えた未来の学び
第4章:公立小学校でも、すごいプログラミングの授業ができる
第5章:ICTの活用で、教科の学習スタイルが激変
第6章:クラウドでクラスの関係づくりも激変
第7章:プログラミング教育は教員も変える

狩野 さやか

株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブやアプリのデザインを中心に制作全般を担当。ライターとしては、技術書籍の他、ICT教育やプログラミング教育について執筆している。著書に技術系で「見た目にこだわるJimdo入門」、子育て系で「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」。

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です