「GIGAスクール構想」って何?Gigabyteのギガではなく…〜元資料をさっと把握できるまとめ

「GIGAスクール構想」が昨年末から話題になっています。ちょっと聞いたけれどなんのこと? ……という方のために、文部科学省で公開されている元資料にさっと行き着けるように概要をつかみやすくしてまとめました。ぜひご活用ください。

2021/03追記:この記事はGIGAスクール構想が立ち上がった当初に書きましたが、その後、コロナ禍により計画は大幅に前倒しとなって進行中です。この記事で紹介した資料は、現在も文部科学省のウェブサイトで正式に公開されているものです。当初と資料のリンク先が変わったものが多いので、ひと通りこの記事からのリンクをチェックして修正しました。また、適宜当初計画との重要な変更点についてはメモを加えたので参考にしてください。

GIGAスクール構想

そもそもなんのこと?

まずこちらです。

「児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するための経費」が、令和元年度補正予算案で2019年12月13日に閣議決定されました。これを受け、文部科学省は大臣メッセージとして「1人1台端末環境は、もはや令和の時代における学校の『スタンダード』」だと示し、「ハード・ソフトの両面からの教育改革」に取り組むと宣言しています。

これを実現するための全体像を描いたものが「GIGAスクール構想」です。

「ギガ」と聞くと、データ量をイメージするので、“太い回線で通信もばっちり安定させてひとり1台環境を作ってクラウドでデータ管理して学校からも家からもささっと学習教材にアクセスできるとかそういうイメージなのかなぁ……”と思うかもしれませんが、「GIGA」はギガバイトのギガではなく、実は「Global and Innovation Gateway for All」の略です。全くGigabyteとは関係ありませんが意外と“ギガっぽい感じ”のイメージはずれていないようです。

施策として3つの要素が整理されています。ハードだけ入れればいいという考えではありません。

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)

2021/03追記:上記資料はかなり当初の資料なので、以下の公式 YouTube動画やリーフレットなどを参照するとよりわかりやすいと思います。

<動画は文部科学省の「学校における1人1台端末環境」公式プロモーション動画>

GIGAスクール実現のために[概要]

計画を実現するためのパッケージが示されています。

最初のページ(下の図)に示されているのは5項目です。
(1)環境整備の標準仕様例示と調達改革
(2)クラウド活用前提のセキュリティガイドライン 公表
(3)学校ICT利活用ノウハウ集公表
(4)関係省庁施策との連携
(5)民間企業等からの支援協力募集

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)

これらのうち(1)〜(4)のそれぞれの詳細が、後続のページで図説されています。全11ページなのでさほど多くないですが、時間がなければ最初のページはしっかり読んで、後続ページは関心、関連の高いページを読み込むと良いでしょう。

長期的な見通しは?[ロードマップ]

長期的なロードマップはこちらをチェックしてださい。
2021/03追記:このロードマップは計画当初のもので、コロナ禍により大幅に前倒しとなり、2020年度中に小中学校全学年で1人1台端末を整備する方針となりました。

GIGAスクール構想の実現 ロードマップ
(PDF/A4-1ージ/以下の図のみ)→2021/03追記:現在はこの資料の3ページ目に記載あり

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)

現状のICT活用の定着状況からいって、十分な活用には時間がかかりそうです。ですが小学校で、次の学習指導要領改訂であろう10年後を待たずに、2024年には「改訂教科書使用開始(デジタル教科書をはじめとするコンテンツの一層の促進 )」となっている点に注目したいです。
デジタル教科書のデジタル化の手法や、児童・生徒用端末での管理方法が、どのように統一されていくのか、使い勝手はどうなるか、が気になります。

お金の出どころは……[予算関連]

予算関連のことはこちら。

GIGAスクール構想の実現
(PDF/A4-1ージ/以下の図のみ)

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)
図中の「措置要件」にある 「5か年計画」についての説明資料はこちら

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)

2021/03追記:コロナ禍で計画は前倒しとなり、その後の予算にも反映されています。あわせてこちらの資料を参照すると経緯がわかります。
GIGAスクール構想の実現(令和元年度補正予算・令和2年度第1次補正予算を合わせた全体像) 
GIGAスクール構想の拡充(令和2年度第3次補正予算案への対応について)

概要で示された各種仕様書は?

概要では、各種仕様書や手引きを示すとあります。その書類がこちらです。

[標準仕様書]

GIGAスクール構想概要の「(1)環境整備の標準仕様例示と調達改革」 に該当する資料。コンピュータ、LANなどの整備の仕様が例示されています。

GIGAスクール構想の実現 標準仕様書
(PDF/A4-34ページ/テキスト中心)
同 概要資料
(PDF/A4-1ページ/以下の図のみ)

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)

[セキュリティ]

GIGAスクール構想概要の「(2)クラウド活用前提のセキュリティガイドライン 公表」に該当する資料。サーバーの管理、もしくはクラウド利用に関するセキュリティポリシーを作るための参考資料。旧版(平成29年10月版)を厳密に守りすぎて、クラウド活用に移行できていないことを指摘して「教育情報の活用に硬直性が生じるという弊害が各地で生じている 」と示しています。その方向転換 ができるようクラウドに関しての章が追加されています。

教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和元年12月版)
(PDF/A4-163ページ/テキスト中心)

同 概要資料
(PDF/A4-1ページ/以下の図のみ)→2021/03追記:現資料は2〜7ページに令和元年12月版に対する「ガイドライン改訂の方向性について」が追加されている

GIGAスクール構想

(上記紹介資料からのスクリーンショット。引用は必ず元データから行ってください)

[ICT活用]

GIGAスクール構想概要の「(3)学校ICT利活用ノウハウ集公表」に該当する資料。ICTの活用例などを学習だけでなく校務や特別支援教育など幅広く示した手引き。章立ても多く全体としてとてもボリュームのある資料です。関心のある章だけ読むことから始めると良いでしょう。以下は2019年12月版で、年度末に追補版が公表の予定です。→2021/03追記:2020年6月に追補版が下記リンク先ページで公開

教育の情報化に関する手引
(リンク先ページに分割したPDFへのリンクあり/A4-巻末資料抜きで255ページ分/テキスト中心)

以上の通り、やることは山盛りで、最前線で動き意思決定をするのは大変なことだと感じます。ただ、全額ではなくとも費用が国から出ることが示されたチャンスを逃さない手はないでしょう。

また、ここに合わせてハードを整備するだけではなく、ソフト面の整備、活用側のリテラシーの向上等が求められるのは当然で必須ですから、それらに関しても掘り下げるよいチャンスになります。

教育に携わる多くの人が、それぞれの専門的な立場から見れば、ビジョンの全体像や詳細について、足りないと感じることや不安、不満もあるはずです。また、現場は全方位的に非専門的なことに取り組むのでとても負担が大きいでしょう。

きっと、「ここが欠けているからこうした方がいい」「こうしたらスムーズにいくはず」というビジョンが描けている皆さんも多いと思います。そのビジョンが発信されれば、現場で役立つ補完情報として活用できると思うので、プラスの方向に盛り上げていけたらと思います。

なお、この記事で紹介した資料は、文部科学省のウェブサイト「GIGAスクール構想の実現について」にまとめられています。今後変更されたり追加されたりする可能性もありますので、適宜、文部科学省のサイトを参照してください。
(2021/03追記:本記事の資料のリンク先を現在の文部科学省のサイトにあわせて修正しました。)

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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