GIGA対応PC、OS、クラウドって何?〜GIGAスクール構想で知っておきたい基礎知識!
GIGAスクール構想により小中学校での一人1台のPC体制が進み、各学校には児童生徒用のPCが導入されます。コロナ禍で計画が前倒しになり2020年度中の導入が目標ですから、予定通りに進む自治体では2020年度中か2021年度からの活用が可能となります。導入されるPCの仕様の背景と、最低限知っておきたいPCとOS、クラウドの話を解説します。「学校でどんなPCを使っているの?」という質問にさらりと自信を持って答えられるようになりますよ。
GIGAスクール対応PCって何?
文部科学省はGIGAスクールのための標準仕様書(「標準仕様書」PDF/掲載ウェブページ)を出していて、児童生徒用に導入されるPCに極端な性能、仕様の差が出ないように配慮しています。この仕様と全く同じPCでなければいけないという意味ではなく、国からの補助金(児童生徒用端末は1台上限4.5万円)で購入できる根拠と指標としてのモデル的仕様です。ですから、各自治体で費用負担を上乗せしてよりスペックの高いPCを導入しても構いません。ここは各自治体の判断に委ねられています。
この文部科学省の標準仕様書に対応しているPCのことを「GIGAスクール対応PC」と呼んでいます。各社は「GIGAスクール対応PC」として、標準仕様書通りで補助金の範囲で導入できる「基本パッケージ」と、標準仕様書外のスペックやオプションが含まれ補助金に自治体負担分を上乗せすることで導入できる「応用パッケージ」を様々に出しています。
なお、標準仕様書では、タッチパネル式であることが示されているので、“タブレットPC”とか“2 in 1”と呼ばれる画面タッチでも操作できるPCが選ばれます。キーボードも必要で、iPadの場合は外付けのキーボードを付属させることになっています。この記事では「PC」と総称します。
OSって何?〜PC機器とOSの関係
さて、みなさんの学校に導入されるPCはなんでしょうか?
こう聞かれると、PC本体の機種名やメーカー名で答える人もいるかもしれませんが、それよりも注目して欲しいのは「OS」(オーエス/Operating System :オペレーティングシステム)です。OSはPC自体を動かす基本のシステムプログラムのことで、PCを購入したときに既に入った状態になっています。いわば“PCそのもの”で、基本的な操作方法やファイル管理、アプリ管理の仕組みなど、様々なことがOSによって少しずつ異なります。
標準仕様書にスペックが示されGIGAスクール構想で学校に入る可能性があるPCのOSは、MicrosoftのWindows OS、Google社のChrome OS、Apple社のiPadOSのどれかです。
OSの会社=PCのメーカーとは限らない
注意したいのは、OSを出している会社と、PCのメーカーは必ずしも同じではないということです。実はここを混同してしまうケースが多く、会話がかみ合わない原因になることがあります。
Appleの場合、iPadはAppleだけが出していますが、MicrosoftとGoogleの場合は違います。Microsoftの「Windows OS」が動くGIGA対応PCは、Microsoft、acer、ASUS、HP、NEC、Dynabook、Dell、富士通、マウスコンピュータ、Lenovo(参照)が様々な機種名で出しています。Googleの「Chrome OS」が動くGIGA対応PCは、acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、NEC(参照)が「Chromebook」という名前で出しています。
つまり、例えば「うちの学校のPCはNEC」とか「うちの学校はLenovoだよ」と答えてもどのOSを使っているかは相手に伝わりません。「うちの学校はWindows PCでNEC製」「うちの学校はChromebookでメーカーはNEC」という言い方をすれば、「どのPCなのか?」ということが正確に伝わります。
PC本体がどこのメーカーのものであるかということは、画面内の操作方法とは関係ありません。操作方法はOSによって異なるからです。ですから、使い方を調べたり誰かに聞くときに重要なのはメーカー名ではなく、OSが何かという情報。Windows PCなのかChromebookなのかiPadなのか……と、OSがわかる呼び方をすると良いでしょう。
ちなみに、PCや教育機関向けの保守サービスなどをセットで販売提供するのはまた別の会社というケースも多いので、混乱しないようにしてください。
アプリはどうやって使う?クラウドって何?
OSを出しているMicrosoft、Google、Appleはそれぞれたくさんのアプリを提供しています。昔は、自社OSにしか自社のアプリはインストールできないというイメージがあったかもしれませんが、今は各社積極的に他社OS用のアプリも提供しています。この3社以外にも様々な会社がたくさんのアプリを出していて、アプリによってそれぞれどのOSで使えるかは異なります。
最近では、そもそもPCにインストールせずに使うタイプのアプリが増えています。例えばGoogleのアプリの多くは、PCにインストールして使うわけではありません。インターネットに接続した状態でウェブブラウザ(インターネットを見るときに使う画面)から使用します。MicrosoftやAppleのアプリもウェブブラウザから使えるものが増えています。ウェブブラウザとインターネット接続があれば、ウェブページを見る感覚でアプリにアクセスできるので、OSを問わずに使用可能で、インストールの手間もありません。こうした形式で使うアプリをウェブアプリと呼んだり、SaaS(サースorサーズ/Software as a Service)と呼んだりします。
PCの本体にアプリもデータも全て入っているというのは昔の話で、今は、インターネットに常時接続している状態で、インターネット上にあるアプリを利用することが当たり前になりました。作成したデータの保存もPC本体ではなく「クラウドストレージ」と呼ばれるインターネット上のデータ保管場所に行うことができます。
こんな風にインターネット経由でアプリ利用やデータ管理を行う使い方や仕組みを「クラウド」と呼びます。もちろんPC本体にアプリをインストールして使ったりデータを保存することもあり併用することが多いですが、例えばChromebookはGoogleのアプリ利用をはじめ、データ保存などは基本的にクラウド上で行うことを前提に設計されています。
GIGAスクール構想は「クラウド」利用推奨
教育現場でインターネットに接続してクラウド活用をするなんてありえないと思う方がいるかもしれませんが、それは昔の話です。2019年12月に文部科学省が示したGIGAスクール構想で、クラウド利用の推奨へはっきりと記述が変わりました(「GIGAスクール構想の実現パッケージ 」PDF/掲載ウェブページ)。標準仕様書の児童生徒用PCのスペックもクラウド利用を前提に示されていますし、ネットワークの構築もこれに耐えられるものにすることが求められています。標準仕様書の表現を引用すると、「従来の端末に集中したオンプレミス型よりも、適切な通信ネットワークとパブリッククラウドによるクラウドコンピューティングを基本とすること」と記載されています。
今、私たちが当たり前に使っているスマートフォンはインターネットに接続した状態で使うのが当たり前です。触っている瞬間にインターネットに接続しているかどうかを意識しない人もいると思いますが、多くのスマートフォンアプリがインターネット経由でデータのやりとりをしています。同じように、PCの使い方も変化してきていて、クラウド利用は当たり前。昔のパソコンのイメージとはずいぶん異なります。子どもたちの使うPC環境はそこを目指して整備されるよう方向付けがされているわけです。
この方向性を押さえておくと、児童生徒全員が接続できるネットワークの強さは必須で、インターネット利用の規制とも言えるような過剰な制限は邪魔になるということがわかります。また、クラウド活用前提なので、個別のPC側の強いマシンパワーや大きな保存容量が必要な使い方は児童生徒配布機の場合はちょっと苦手な可能性も。例えば、リッチな作業が必要なデジタル制作活動を積極的に行いたい場合は、学校に数台でも高スペック機があると幅が広がるでしょう。
現実にはさまざまなトラブルも準備不足もあるままのスタートになってしまう学校も出てくると思いますが、大きな方向性を知って、ぶれずにあきらめずに道筋をつけていって欲しいと思います。
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