オンライン学習にチャレンジしてきた千葉大学教育学部附属小学校の取り組みが「中の人」の視点で書籍化
以前話題にした千葉大学教育学部附属小学校が、新型コロナ対策をきっかけに加速させたオンライン学習の取り組みが本になりました。同校の先生方が数ヶ月間の取り組みをもとに、「中の人」だからこそわかる視点で執筆しています。
オンライン学習でできること、できないこと 新しい学習様式への挑戦(千葉大学教育学部附属小学校 著/明治図書出版)
私がずっと印象に残っている「教師が何もしない姿を子どもたちに見せるわけにはいかない」という言葉が最初の方の見出しにあります。3月以降、私は同校の取材を含め「動けた学校」の先生方のお話を聞く一方で、現実には大多数の「動けなかった学校」とそこに通う子どもたちを目の当たりにしてきました。それだけに、非常に強くこの言葉が響きました。そして、ほかにも取材で出会ったりSNSで発信をされている「動けた学校」の先生や自治体担当の方からは、表現は違えど似たような言葉を聞いたことを思い返します。
本書では、新型コロナ以降の話だけでなく、学習指導要領の改訂の背景をふまえた、数年前からのICT整備からの大きな流れもわわかります。モノがほぼ無い状態からの財源さがしと人事による道筋づくり。あの混乱で瞬発力を発揮できたのはそれまでの流れがあったからこそでしょう。ギリギリすべり込みセーフのタイミングだったこともわかります。
また、新型コロナ契機のオンライン学習に関しては、全員が初心者だった先生方の実践の実例と実感のこもった感想が。限りなくICT活用ゼロの状況から取り組まれた先生方もたくさんいる中での声ですから、「マネできない」なんて構えて読む必要はありません。
オンラインといってもいろいろなスタイルがありますから、類型の整理にもなっています。個別の切り出された事例ではなくひとつの学校の取り組みとして読めるのはとても貴重です。また、PTAの方の保護者視点でのサポートの話も入っていて、学校と親はチームであり、こうやって同じ気持ちで子どもを見守っているはずなのだよな……と改めて感じさせられました。
保護者として、本来こういう応援はいくらでもしたいと思っている方はきっと多いでしょう。学校、地域の教育委員会との方針と足並みがそろわずに、苦しみながら提案や要望等を繰り返した保護者の方々の動きはいくつもありましたし、クレームになるのを恐れて声を出せなっかった保護者の方もいるはずです。その意味でも、学校と保護者が同じ方向を見て協力しあえた事例としても貴重なのではないでしょうか。
さまざまな立場の方にとって参考になる1冊だと思いますので、是非チェックしてみてください。
【目次】
第1章:オンライン学習導入までの道のりとその実際
第2章:Microsoft Teamsを学校全体で運用するポイント
第3章:私たちにとっての「学びを止めない」
第4章:Microsoft Teamsでの学習指導例
第5章:アフターコロナの学校にオンライン学習はあるか
第6章:編集委員座談会―現場の本音語りつくします
同校の新型コロナ対応の初期の記事を私が書いているのでこちらもどうぞ
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