先生に会って「思ったより大きい」と感じた2ヶ月遅れの入学式〜千葉大学教育学部附属小のオンライン授業実践から

千葉大学教育学部附属小学校は、Microsoft Teamsを使って休校中もオンラインでの授業にチャレンジしてきました。以前こちらの記事(インプレス:子どもとIT「一斉休校で児童と先生をICTが結んだ、学びのライフライン」)で取材をして3月の取り組みの様子をご紹介しました。

その後、4月の新学期から本格的にオンライン授業のためにTeamsを活用しています。その様子はNHKのニュースでも紹介されていました。約2ヶ月を経ていよいよリアルな分散登校が始まった千葉大学教育学部附属小学校のFacebookページに、とても印象的な言葉が出てくるのでご紹介します。この記事ではごく一部を引用しますので、全文はぜひ直接同校のFacebookページでご覧ください。

新1年生が先生に「思っていたより大きい」〜先生とオンラインでつながっていた安心感

5月末、1クラスずつ3日かけておこなった入学式の様子の投稿(2020/5/31)から。

あるクラスの子は,担任の先生を見るなり「思ったより大きい」と言い,言われた当の担任の先生は,「思っていたより小さい」と思ったそう(笑)

2ヶ月遅れの入学式で、初めてという感覚ではなく、会った途端にそんな言葉が出たことを、本当によかったなぁ、素敵なことだなぁと感じます。これは4月からオンライン授業としてコミュニケーションを取れていたからこそ。

先生に会って「思ったより大きい」と感じた2ヶ月遅れの入学式〜千葉大学教育学部附属小のオンライン授業実践から

小学生になるというのは、子どもにとっても親にとっても、とても大きなステップです。ついこの前まで幼稚園や保育園に行っていた子ども達。「楽しみでしょうがない!」とワクワクしている子もいれば、不安でしょうがない子もいるし、不安とか緊張という概念すらわからずただはち切れそうな気持ちを抑えられずに泣いてしまうしかない子もいます。

そんな子ども達が、こうしてオンラインで学校とつながり授業をスタートして、登校への助走をできたことは、本当に、大きな価値のある取り組みだと思います。

オンライン化ができなかった学校では、本当に3月から完全に3ヶ月間、少しの登校日を除いてコミュニケーションが止まってしまいました。私はそんな状況も各所で目の当たりにし、学習内容が遅れることよりも、子どもと学校のつながりがほぼ断ち切られてしまったことを非常に残念に思ってきました。だからこそ余計に、この「思ったより大きい」というひと言の価値の重みを感じています。

5年生の感想からも、つながり続けていたことが緊張を和らげたことがわかります。2、4、5年生の登校スタートの日の投稿(2020/6/1)です。

「久しぶりに学校へ来たけれど,チームズをやっていたおかげで,あまりきんちょうしなかったです。でも初めての友達がいたり,初めて会う先生がいて,今日はとても楽しい一日になりました。まだコロナの中ではありますが,二年間,仲良くしたいです。そしてステキな高学年になりたいです」

高学年だって新しい学年を新しい先生と迎えることは不安です。3月からの3ヶ月がコミュニケーションゼロの空白だったとしたら、こんな気持にはなれなかったかもしれません。本当に、とても大きな違いです。

オンラインだと対等になれる

もう一度最初の引用に戻りましょう。

あるクラスの子は,担任の先生を見るなり「思ったより大きい」と言い,言われた当の担任の先生は,「思っていたより小さい」と思ったそう(笑)

この「思ったより大きい」とか「思っていたより小さい」という言葉から、オンラインコミュニケーションだからこそ、ある意味対等になれる側面があることに気付かされました。

ビデオ会議システムは、多くの場合、顔部分を主に映すので、確かに体の大きさの概念が除外されます。顔に印象が集中するというのはマイナスもあるでしょうが、大きさのフィルターを取り払えるというのはプラスと考えても良いのかもしれません。

大人が子供を小さく見ない、子供が大人を大きく見過ぎない、というのは、対面のコミュニケーションでも大切なことですね。そして、意外と難しい。気をつけなければいけないと思います。

でも、やっぱり実際に会うっていいよね

そして、オンラインよりもやっぱり実際に会いたい、という声も。1、3、6年生の登校スタートの日の投稿です(2020/6/2日)。

「友達と会えたのが,すっごく楽しかった~」との声。
「でも,今までTeamsでも会っていたんだよね」と尋ねると,
「ぜっんぜん,違う。やっぱり,直接会った方がいい!」

投稿はこう続きます。

そうなのです。これは,すでに先生方からも出ている声でもあります。同じ時間に,ほぼ同じ場所にいて,同じ情報を共有しているはずなのに,同じものを共有している感覚になりにくいのです。画面を通して話している○○さんや◆◆先生は,確かにその人なのに,直接会って話すのとは全く違う感覚になるというのは,当たり前と言えば当たり前なのですが,不思議です。直接,アイコンタクトができないということの歯がゆさは,授業をするうえでも大きな壁になります。

対面が再開できたとはいえ、まだ様々な制約が伴います。今後、当面はオンラインの手段とリアルな対面の手段を組み合わせるのがごく自然で、合理的です。こんな風にして、オンラインの良さ、対面だからこその良さが先生にも子どもにも保護者にも見えてくると、両方の良さを使った新しい学びのスタイルができあがっていくでしょう。

新しいことに取り組む時は、完全である必要はないので、試して少しずついい形に持って行く余白が必要です。今学校に必要なのは、子どものために完全な形を作って提供することではなく、子どもと一緒に試して形を作っていく余白なのかもしれません。

4月のNHKのニュースで同校の副校長大木圭先生が、あまり準備期間がない中でオンライン授業をスタートさせることについて、「(もし困難だからと動かなければ)子どもたちに何もしない姿を見せることになってしまう」という趣旨の話をしていたのがとても印象的でした。

子ども達にとって学校はけっこう大きな社会です。その学校がこの予測困難な事態にどう対応したのか、先生たちがどう動くのかを目撃したことは、子ども達にとって大切な学びの現場でもあったわけです。

「時間をかけて揺るぎない正解を出してから間違いのない行いをする力」と「変化する状況に応じて情報を集め決断してすぐに事態に対応する力」があるとしたら、子どもたちにはどちらの力をつけて欲しいでしょうか? そして、各自治体、各学校が子ども達に見せた姿はどちらだったのでしょうか。その重みを改めて感じています。

狩野 さやか

株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブやアプリのデザインを中心に制作全般を担当。ライターとしては、技術書籍の他、ICT教育やプログラミング教育について執筆している。著書に技術系で「見た目にこだわるJimdo入門」、子育て系で「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」。

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