ゲーム感覚でプログラミング学習〜Life is Tech!のオンライン学習コースMOZER

ひとことで子ども向けプログラミング教育といっても、幼児や小学生を対象にした場合と、中高生を対象にした場合では、アプローチの仕方も随分変わりそうです。中高生の場合はベースになる読解力や操作能力を高く設定できるため、アプローチの幅が広がるでしょう。

エンタメ型インタラクティブを目指したオンラインコース

中高生向けのプログラミングキャンプやスクールを手がけるLife is Tech!(ライフイズテック株式会社)が、楽しみながらプログラミングを学べるオンライン学習コースを発表しました。

MOZERと名付けられたこのサービスは、ゲーム感覚で学べるというコンセプトで、自分自身のアバターと登場キャラクターが対話をする形式でストーリーが展開していきます。

オンライン学習で多いのはビデオ視聴タイプですが、画面の前で見ながら眠くなってしまったり、モチベーションが続かずに途中でやめてしまった経験のある人も多いかもしれません。それに対しこのMOZERは初心者でも挫折せずに続けられるよう楽しいストーリー展開や短い会話と操作を重ねて学習が進むように設計されています。プログラミング学習の地域格差や経済格差を解消することも開発の目的のひとつで、オンラインで学ぶ意欲が続くよう、利用者同士の学び合いの場としてのSNS機能も備えられます。

Webデザイン学習コースの体験版が公開中

今回体験版として公開されたのはWebデザイン学習コース「デイジーと秘密のメッセージ」で、https://mozer.ioから無料で誰でも利用することができます。

パン屋さんのウェブサイトを作るストーリーが展開し、短いセリフひとつひとつにクリックで反応しながら、タイプしてコードを書き換えたりクイズに答えたりして、HTMLとCSSを習得していきます。

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なんでも「子ども向け=ゲーム風」はどうなんだろう?

とはいえ、です。正直に言えば、子ども向けや初心者向けとなると、何でもゲーム化したりキャラクターが登場するというパターンになるのはどうなのだろう?という思いがありました。

キャラクターとの会話をひとつずつ読んで進めなければならないのは、ちょっと余計な演出やステップにならないだろうか、対話式で進むわかりやすさを目指すと俯瞰しづらくかえってわかりづらくならないだろうか、といった不安も感じます。

そんな気持ちも少々持ちながら、実際にこの新サービスを体験する中高生たちの様子を見学しました。……結論から言うと、そんな見方を、反省です。

今回新サービスを体験したのは、広尾学園中学校・高等学校の生徒たち。広尾学園は私立の中高一貫校で、入学時にはコースに応じてiPad、Chromebook、MacBookのいずれかを購入し、通常の授業や学級活動で利用しているというベースがあるので、機器の扱いやタイピング等基本的なことは習熟度が高い生徒たちです。

「ゲーム的」であることは、もはやひとつの表現形式

スタッフからサービスの紹介を受けたあとは、生徒がそれぞれ端末に向かって自分で教材に取り組みます。初めて見るインターフェースにも戸惑いなく、どんどん進んでいきます。

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声を掛け合ったとしても、お互いの画面を覗き込んで話し合うというのではなく、どちらかというと独り言に近い感じで、それぞれ自分の画面だけに集中しています。教材のキャラクターが発するセリフをどんどんクリックで読み進めていくのも手慣れたもので、問いに答えてタイピングするのも非常にはやい。

スタッフの「短い体験時間ですが……」という表現で体験タイムがスタートした時に「よーし全クリ(全部クリア)目指そう」との声が上がったのが印象的でした。そう、どうもこれは完全にゲームをやるときのマインド設定になっているようです。教材で要求される作業自体は簡単なことなので、どんどんステージを進めていく感覚の面白さがあるのでしょう。

個別に話を聞いてみると、中には、あるプログラミング言語を本で独学した経験のある生徒もいました。本で独学できる生徒が、こうしたゲーム的な設定の教材をどう思うのか興味を持って尋ねたところ、とても肯定的な反応で「わかりやすい」とのこと。

なんでもゲーム化とかマンガ化するのは「子どもだまし」のようなイメージを少々持っていましたが、それは曲がった見方だったようです。子ども向けのものが何かとゲーム化されているのが当たり前な世代で、それはそれでひとつの「表現形式」となり、ものごとを理解する近道として機能していると感じました。

ここが、日頃から中高生向けのリアルなプログラミングキャンプを運営し、中高生達と接しているLife is Tech!ならではの実感を伴った視点なのでしょう。

「なんだ、意外と簡単そう!」と、習得への敷居を下げてくれるのは間違いなさそうです。

これからの展開に注目

Life is Tech!のプログラミングキャンプのWebデザインコースで、試験的にこのMOZERのプロトタイプを使用したところ、PDF教材で20時間分かかっていた内容を4時間で習得できるスピードアップが実現したそうです。もともと、自分で読み進めながら基本を学び、その後自由制作をするスタイルなので、自由制作時間をたくさん確保できたとのこと。

ゲーム的な集中の仕方は、現場でのコミュニケーションをわざと発生させたいようなシーンには向かないかもしれませんが、オンラインコースや自習にはプラス要素が多そうです。

正式版は年内に、1コース月額1500円(学割料金)でスタート予定で、順次、ゲーム開発やアプリ開発等の他のコースも開講されます。

ウェブデザインコースで扱うHTMLやCSSはいわゆる「プログラミング言語」とは違い、比較的習得の難易度は低く使う頭の論理構造も、アプリを作るようなプログラミング言語とはかなり方向性が違います。今回発表されたエンタメゲーム的手法を、もっと複雑な「プログラミング言語」の習得にどう生かすことができるのか、その点にも今後注目していきたいと思います。

Life is Tech!(ライフイズテック株式会社)
MOZER

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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