「動画ですぐに客観視」が生きた音楽の実践!
タブレット端末の「使いやすさ」が、 授業に取り入れる学校の先生側の敷居も下げて多様な実践の生まれる土台になっている、という前回の記事につづき、今回は『JAPET&CEC成果発表会 平成26年度「教育の情報化」推進フォーラム』で見た実践から具体例をご紹介したいと思います。今回は、「動画」機能を上手に活用した音楽の授業に注目してみます。
動画による客観視を最大に生かす
小5の合唱の実践(板橋区立上板橋第四小学校 姜亜未教諭発表)では、動画の扱いやすさや、撮影〜視聴の即時性の高さが生かされていました。
まずは機器なしで全体で練習します。各自楽譜(紙)に、大切にしたい言葉やどんな風に歌うか等気付いたことを書き込みます。
数時間の授業ののち、iPad登場です。事前に、楽譜と伴奏音源を取り込んであり、楽譜を見たまま伴奏の再生/停止等の操作ができます。iPad上の楽譜には手書きで書き込みが可能なので、まず、各自の楽譜(紙)に書き込んでいた気付きをグループの楽譜(iPad)に書き込み、グループの書き込み楽譜を完成させます。これで、個人のイメージをグループで共有することの第一歩。
ここからグループ練習です。iPadに伴奏と書き込み済み楽譜がセットされているわけなので、そのまま譜面台に置いたiPadを囲んでグループ練習が簡単にスタートできます。CDではコントロールしづらい再生位置の変更も簡単で部分練習にも便利です。こうした扱いの手軽さも重要なポイントです。
そして動画撮影、グループ練習を撮影します。ここは潔く、グループごとに、もう一台別のiPadを登場させて撮影用に使いました。
ここで、即時性の高さも力を発揮、その場ですぐ自分たちの歌を聴いてみます。楽譜に書き込んで意識して歌ったはずの部分が、聴いてみると意外と再現できていないことに気づくなど、客観的に検証することができました。子どもたちが「より聴き手を意識した表現をしようとする」ようになったというのは、大きな効果です。
しかもそれをグループごとの練習という形で取り入れることで、小グループの中で自発的に指摘しあい、教えあい、考えて取り組むというコミュニケーションが生まれました。また、一斉練習では引き出しにく「大勢の中の一人ではなく、自分が大切な参加者の一員であるという意識」が高まったというのは、とても大きな変化を生み出したのだと思います。
客観視を下支えるす指標の共有が大切
私自身音楽が好きなので実感がありますが、演奏を録音して聴いてみると自分で思っていたよりもはるかに出来ていない、ということに気づかされます。
音であれフォームであれ、動画を撮影してその場で確認するというのは、客観視するのには最適。他にも体育や書道等、技能系の教科ではとても有効な手段になるでしょう。
その時に大切なのは、単に撮影して見せれば子どもが勝手に自主的な姿勢で取組み始める、ということではない、ということです。
紹介した実践例で言えば、紙の楽譜に自分で書き込み、iPad上の楽譜でグループの気づきを集めた楽譜を作る、という前段階があって初めて、「その楽譜で気をつけようとしたことが実現できているか」という指標が生まれたのだと思います。
この段階なく、いきなりiPadを渡され、便利な伴奏付き楽譜でグループ練習しましょうと言われても、おそらくここまでの効果は見られなかったでしょう。
また、単に動画を撮影し見ても、指標がなければ、グループ内での自主的な意見交換は生まれにくいはずです。何がよくて何が悪いのかすらわからない可能性も高いわけなので、こうしてグループ内で共通の指標を持つ段階というのはとても大切だと思います。
体育でフォームチェックなどに使う場合も、そうした指標やベースになる共通認識を持たせる段階が大切なのだろうと感じました。
タブレットを渡せば協働学習が自動的に生まれるなんてことはなく、アプリケーションに依存するものでもなく、協働学習自体は紙と鉛筆でとできるものです。
全体の学習計画の流れの中で、必要な段階で自然にタブレット端末が取り入れられているのが、とてもいい実践例だと感じました。
2件のフィードバック
[…] 前回に引きつづき、『JAPET&CEC成果発表会 平成26年度「教育の情報化」推進フォーラム』からの実践ご紹介です。 […]
[…] 「動画ですぐに客観視」が生きた音楽の実践! 先生の自由さが生んだ、子どもの創造的なタブレット使い […]