[オランダ現地レポート]図書館には子ども向けメーカースペースが常設!!〜アムステルダム市「Maakplaats 021」の魅力

オランダ在住の筆者による現地のICT活用レポート第一弾。今回は子ども向けのメイカースペースである「Maakplaats 021」の魅力をご紹介します。

イベント開始前の様子

Maakplaats 021」は、21世紀型スキルと呼ばれる、変化し続ける社会に順応する力を身に付ける目的で開設された子どものためのメイカースペースです。図書館の一部を専用スペースとして確保し、3Dプリンター、レーザーカッター、シールカッター、ハンダやドリルなどデジタルファブリケーションに必要な機材を常設しています。ICTの教育現場への導入やSTEAM教育が注目を集める中で、学校単位の活動をサポートしたり、学校以外でも子ども達がSTEAM教育、ITを使ったものづくりに触れられる場を提供しています。

2020年2月2日(日)、アムステルダム中央図書館で「Maakplaats 021」のオープンイベント「De Grote Maakplaatsdag(The Great Manufacturing Day)」が開催されました。図書館のフロアに様々なワークショップが用意され、子どもは誰でも参加できます。活気に満ちた週末の1日の様子をレポートします。

アムステルダム中央図書館 子どもフロア

アムステルダム中央図書館、広大な子どもコーナー。

プログラミング電子モジュールやはんだごてを使った電子工作などさまざまなワークショップ!

イベントが開催されたのは、アムステルダム中央駅からほど近いアムステルダム中央図書館(OBA library of Amsterdam)の児童図書フロア。「Maakplaats 021」の常設スペースの他にも、広いフロア内の様々なエリアがイベント用に特別にアレンジされていました。

プログラミング、IoT 体験エリアにはこの日のスポンサー企業、makeblock社が真新しい「Neuron」のセットを揃えてスタンバイしていました。

プログラミングキットなどを利用する場合はイベント毎にスポンサーが異なるようで、以前別の図書館で行われていたイベントでは 「littlebits」や「Ozobot」などで遊ぶ子ども達の姿が見られました。

neuronを組み立てる子ども

ギターを作る

音に反応してしっぽを振るネコロボット

この日利用していた「Neuron」はブロックのような電子モジュールを組み合わせて楽器やセンサーに反応するロボットなど様々な仕組みを作ることができるツールです。電子モジュールを組み合わせるだけで作れるものから、プログラミングをすることで高度な制御をするものまで、レベルによって様々に楽しめます。makeblock社と「Maaktplaats021」のスタッフが子ども達をサポートするのですが、わかりやすい説明動画があるため自分でどんどん先に進める子どももいます。

Neuron」に取り組むプログラミング体験エリアの他にも様々なエリアがあり、子ども達は自分が興味のあるコーナーに自由に参加しています。写真でご紹介しましょう。

電子工作の一場面

トコトコ動くロボット達

こちらは電子工作でプロペラでたどたどしく動くおもちゃを作っている様子

バルーンレース

こちらは少しアナログな、風船の空気で進むダンボールカーレースの様子

電子工作のパーツを選ぶ
はんだづけ

8歳以上が対象のワークショップ。電子基板にミニライトと電池をはんだで取り付けて、光るネックレスを作ります。ぎこちない手つきながらも子ども達は興味津々で工作に取り組んでいました。

ダンボールを使った動くおもちゃの工作

奥の木製の棚の中に3Dプリンターやシールカッター、レーザーカッターが収納されています。機材の入っている木製家具はそれらの機材を使ってスタッフが自作したもの

街についての考察とジオラマづくり
それぞれ興味のある分野に取り組む

「街、都市」についての考察を交えつつジオラマを作るコーナー

 

おおらかな雰囲気でテクノロジーを使ったモノづくりを体験できる

OBA 児童書コーナーの一部

日本の公共施設は安全性が最優先で、柔軟さを求めることは難しい印象があります。図書館のような場ではんだごてやドリル、カッターを使って工作の場を提供しているというのは筆者にとっては驚きの光景でした。実際にはんだごてで火傷をしている子どもも見かけたのですが、準備されていた小さなパックの塗り薬が手渡され、よくあることといった感じで周りも特に気にする様子はありません。チャレンジにリスクはあって当たり前といった大らかさと、無茶苦茶なことをする子はいないという子どもに対する信頼感のようなもの、企画者と参加者のモラル意識が垣間見えるような気がしました。

子ども向けのプログラミングやIoTのイベントは人気があるようで、以前ハーグの科学博物館で行われた子ども向けTechイベントは恐ろしく混雑して楽しめなかった、とこの日一緒に参加していた友人が言っていました。この日は賑わってはいるものの、プログラムが多彩なこともあってかひどい混雑はありませんでした。大きなガラス窓と吹き抜けのある広くて快適な空間で、子ども達がそれぞれの工作や作業を思い思いに楽しんでいるのが印象的でした。

アムステルダム市が図書館という場で運営する価値と意義

進化する技術、テクノロジーと、それらを使って仕事をする必要性がより高まり続ける中で、必要なのはコンピューターについての知識だけではありません。 物理的・工学的なモノづくりに必要なツールや道具、方法に子ども達が気軽に触れることができるように「Maaakplaats 021」はアムステルダム市と複数の企業の支援によって公共のプログラムとして運営されています。市が支援することで、図書館という公共の場所で快適で開かれた教育体験の場を実現しているのです。

日中は近隣の学校によって交代で利用され、放課後の時間帯には無料のワークショップやオープンデーが定期的に開催されます。広く子ども達にデジタルファブリケーションに触れる機会や、高価な機材を使える場が提供されているというのは、大きな魅力です。学校によって教育方針が異なるオランダでは、全ての学校がこぞって利用するという状況にはまだ至らないとはいえ、徐々に活用する学校が増えてきているとのことでした。

子ども達が負担なく、楽しんで参加することのできる教育体験の場が公共の場にあることは、子育て世帯にとって経済的にも教育的にもとてもありがたいことです。図書館内というロケーションも足を運びやすく、親子共に快適に過ごすことができ、あらゆる分野の情報に触れることができるという点でも本当によくできていると感心させられます。この「Maakplaats 021」は、現在アムステルダム市内に合計8箇所あり、今後も拠点を増やしていく予定とのこと。日本の自治体でも、時代に合った面白い教育の場がどんどん増えていくことを期待しています。

この記事で紹介したMaakplaats 021
Maakplaats 021

伊東 けいこ

Web制作者&ライター。2017年よりオランダ在住。 サイト構築の傍らオランダにおける教育&テクノロジー、社会&テクノロジー周辺を追っています。https://chari-kamo.com

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