忘れものばかり!手順を覚えられない!子どもの「困った」によりそうアプリ〜ソフトバンクと香川大学による『アシストガイド』
毎朝、「はやくじゅんびしなさーいっ!」の声を上げなかった日はない……という子育て中の方、多いのではないでしょうか。毎日繰り返されるルーティンワークがきまって滞ると、親として見守るにも限界が来て、イライラの原因になりがちです。
「いつもの手順をこなすだけ」が子どもにとっては難しい
大人から見れば当たり前の「いつもの手順」でも、発達段階によっては子どもにとっては簡単なことではありません。また、注意がそれやすい特性のあるお子さんの場合は特に、本人には全く悪気はないのに、手順の合間でふっと別のことに気を取られて動きが止まってしまうのも日常です。
お子さんの発達段階や特性によっては、「なんでいつもそうなの!」と怒っても効果はなく追い込むばかり。やることを可視化したり、作業の流れを切り分けて単一のタスクにして見せてあげることが大切です。そうした手立てとして、手順を絵と言葉で書いて壁に貼ったり、ホワイトボードに書いたり、カードにして手順がひとつ終わるごとに次のカードを渡したり……なんてさまざまな工夫を試している方もいるでしょう。そんなサポート手段のひとつとして使えるアプリをご紹介します。
シンプルで明快なガイドアプリ
「アシストガイド」は、ソフトバンク株式会社と香川大学の共同開発で作られたアプリ。手順の把握や記憶、注意力などに特別な困難さがある子ども達を、ICTの力でサポートするために開発されました。iOS版(iPhone、iPad)とAndroid版の両方があり、スマートフォンとタブレットどちらでも使えます。
機能はとてもシンプル。まず、朝のしたくの手順や登校時の持ち物など、お子さんに必要な「おたすけメモ」をあらかじめ作成しておきます。お子さんが必要なときにこのメモを開いて手順を確認しながら作業を進めます。メモには3つのジャンル「やりかた」「行きかた」「持ちもの」があり、手順のチェック方法や登録の仕方はどれもとても簡単です。
メモには手順ごとに写真を登録することができるので、文字がわからない年齢のお子さんや読字が苦手なお子さんにも直感的に伝えられます。お子さん自身が、自分でステップを確認したりチェックをいれたりできるので、作業を進めやすくなります。スマートフォンやタブレットを扱うのを喜ぶお子さんならモチベーションも上がるでしょう。
「おたすけメモ」の他に「予定」機能があり、カレンダーでスケジュール管理ができます。習いごとの予定を入れて「持ちもの」メモを関連づけるという使い方も。
困難さのある子も発達段階の子も
困難さをかかえる子ども達のためのツールというのは、スキルを獲得する発達段階のお子さんにもそのままぴったりくるものです。発達のスピードはさまざまで、子どもはゆっくり少しずつスキルを身につけるもの。困難さのあるお子さんでも、スキルを獲得中のお子さんのでも、こうしたアシスト系のツールを使うことでお子さんが作業を進めやすくなります。毎日目の前で見ている親はついつい言い過ぎでしまうものなので、親がゆったり子どものペースに寄り添うためにも役立つでしょう。
家庭では、アプリを親のスマートフォンに入れたり、家庭共用のタブレットに入れたりして利用すると良いでしょう。特性の強いお子さんの場合、自分のスマートフォンを持つ年齢になったら自分のスマートフォンにアプリをいれて外出時に活用できます。また、学校では支援系の教室ではタブレットの導入が既に進んでいますから、学習用のタブレットに入れてすぐにでも使用できます。「おたすけメモ」を子どもと一緒に作れば、作業を分割するよい練習になりそうです。
アプリの検証は、香川大学教育学部特別支援教育領域 坂井聡研究室、技術領域 宮崎英一研究室が、附属特別支援学校や附属坂出小学校で行い、効果が確認されています。実際に「次にすることが分かりやすいので助かる。初めての場所でも確認してポストに手紙を入れるお手伝いができた」(子ども)、「色々な使い方を試して、子どものできることを増やしていけば、将来の生活に役立つと感じました。子どもが、これを使って達成できたときの表情が良かったです」(保護者)などの声があったことが報告がされています。
香川大学の坂井教授は、先日開催された「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる 東京学芸大学附属小金井小学校 ICT×インクルーシブ教育セミナーVOL.3」にちょうどがゲスト出演されていて、インクルーシブ教育の考え方や、学級経営に大切な視点などのポイントをわかりやすくお話しされていたのが印象的です。
こうしたツールを活用することで、お子さん自身や親子の関係の快適さが少しアップするということがよくあります。どんどん試して、ぴったり合う方は日常的に活用してみてください。