書くことに困難さのある子には音声入力が効果抜群!〜GoogleドキュメントのVoice typingが便利

「書くこと」がとっても苦手な子、というのはいます。書字障害と判定されるレベルの子からなんとなく苦手、という子まで幅はさまざまでしょうが、書くだけでエネルギーを使わねばならないタイプの子は確実にいます。

そんなタイプの子が長い文章を書き上げるために、ICTの力を借りてどんな工夫をしたか? 実際にとても役だった方法をご紹介します。以前、『漢字使用率アップに効果大〜漢字が苦手な子への対策は「覚えないでいいから使う!」』という記事を書きましたが、その続編です。

googleドキュメントのvoice typing

「苦手」ってどのくらい大変なの?

苦手っていっても練習が足りないだけじゃない?と思うかもしれませんが、そういう次元ではありません。例えばどのくらい書くことが苦手かというと、原稿用紙たった1枚分をただ単に清書するだけでも、数時間かけて休み休み書いてどうにか終わる、というくらいの状況です。そんなにゆっくりやっても、それでも1文字足りない、とか、平気でやってしまいます。これだけで相当疲れてしまいます。

原稿用紙のつらさは、句読点を打ち忘れたり、送り仮名1つ間違えたり、促音の「っ」を書き忘れてしまったりして、たった1文字を足すために、その先全部消すしかない、という状況に陥ること。書くのが苦手な子はたいてい消しゴムで文字を消すのも苦手で、筆圧が不必要に高い場合も多いものです。文字はきれいに消えず紙はくしゃくしゃになり、紙面が汚れがちで気持ちも下がります。やっと書き終わったと思ったのに、1文字足りなかったり多かったりが発見されて、そこから先、マス目の都合をつけられる場所まで書き直すなんて、「えーうそでしょー!」とつらくて、ため息は出るし不機嫌にもなるし泣きたくもなるだろうね……というのがリアルな状況。

考える力や理解力と文字を書く機能は別のもの

こういうタイプの子が、作文を推敲するような作業というのは、本当に大変です。おそらく、考えることと書く作業に全く別のエネルギーを必要とするので、考えることはできるのです。考えを口頭では表現できても、赤で書き込むのがそもそも大変。さらに、赤を入れた原稿をもとにもう一度きれいに全文書き直すのがまた驚くほど難しい。もう、ぞっとするわけです。そういうタイプの子にとっては、かなり無茶な工程です。

そんなふうに「書くこと」に苦手感のある子が、あるとき原稿用紙3枚分の文章をどうしても推敲して仕上げたい!という状況に直面しました。文章を再構成したいとう気持ちも理解力もあるし、書き上げたいという気持ちはあります。でも、推敲の最初の段階で、すでに先の工程をとても乗り越えられないほど時間とエネルギーを消費してしまうことがはっきりしました。ただ写すだけの清書作業が最大の難関だったのです。推敲を繰り返すなんて至難の業。

さて、そんな時にどうするか。こういうときにこそ役立つのがICT機器です。文章を移動させたりミスを修正するのに消しゴムは不要。赤入れする代わりにその場で書き直して即完成原稿になります。

ただし小学生の場合、鉛筆の代わりにキーボードでタイプできるとか五十音入力できるほどのスピードは身につけていません。キーボードのタイピングでは、まだ考えることと手作業を同期させられません。この点では、文字を書くのが苦手な子が文字を書こうとするの同じ。そこで大いに役立つのが「音声入力」です。

「音声入力」が大活躍〜Googleドキュメントの音声入力がおすすめ

MacのOS付属の音声入力機能をONにしておけば、Wordでもテキストエディタでもマイクから入力ができます。Windowsの場合もOS側に音声入力の機能があります。また、Googleドキュメントの場合、Googleの音声認識機能で音声入力することができます。

日本語でだらだらっとしゃべったものをどう認識するかをMacとGoogleで比べたとき、私の感覚では、Googleの方が日本語認識の予測度がかなり高いと感じたので、Googleドキュメントを道具として採用しました。(後半で使い方をご紹介します。)

どのくらいスムーズに入力できるかというのを、先に動画でお見せしましょう。音声をONにして確認してみてください。

推敲過程はデジタルで手書きの清書にパワーを残す

最後の清書だけは手書きで清書することにして、手書きがその1回だけで済むようにするために、そこまでの完成原稿をデジタル上で仕上げることにしました。元原稿はすでに作文用紙に書いてあるので、それをまずはデジタル化します。自分の書いた文章をしゃべればいいだけなので、元原稿をとりあえずデジタル化するのは、子どもがさほど苦になる作業ではなく、むしろ楽しそう。句読点や改行を適宜キーボードでフォローすれば良いだけ。認識がわるい箇所をちょこっとタイプし直すくらいはたいして大変なことではありません。漢字が苦手でも勝手に変換してくれます。

そこからは、紙上で推敲するのと同じで構いません。一旦プリントアウトして紙に書き込むなどする方がイメージしやすければそうすればいいし、構成の再検討を紙のメモ上でしても良いでしょう。もちろん、画面上でいきなり直せるようならそれでも構いません。文章をまとめて移動したて段落を入れ替えるのもデジタルデータは大得意です。表現の変更や語尾の統一なども、もう一度しゃべればいいだけですから、本当にストレスなくできます

文章の内容や構成が納得いくところまでできたらそれで完成です。原稿用紙と同じ字送りになるようにプリントアウトしておくと、清書に便利です。書くのが苦手な子の場合、仕上がりと字送りが違う見本を見ると、清書時に書き間違う可能性が高まるので文書をプリントアウトするときに整形してあげるとよいでしょう。

この音声入力を使わなかったら到底乗り越えられなかっただろうと思いますが、何日がかりかで推敲と最後の清書までがんばって終わらせることができました。これはとても良い自信になったようです。

半分アナログ半分デジタルという選択肢もあり

本人が本当に無理ならば、デジタル出力での提出を先生に交渉してもよいでしょうが、このときは、「自分で手書きで書いて出したい」という気持ちが本人にあったので、途中の工程でだけICT機器を活用しました。最後に書き写すところだけがんばる、というのも本人のやりたいことの一部なわけですから、完全デジタルか完全アナログかという考え方をする必要はありません。こういうことが全てケースバイケースだと言えるでしょう。

結局その後、普通の作文は推敲なんてしないで一発勝負で誤字脱字は多くても手書きで書いています。日常的に使うのか、いざというときに使うのか、それは個々の苦手感や度合いに応じて決めていけばいいことでしょう。いずれにせよ、代替手段として音声入力は本当に驚くほど便利で役に立つので、苦手感のあるお子さんの場合は一度試して見ると良いのではないでしょうか。

Googleドキュメントの音声入力「Voice typing」の使い方

Googleドキュメントは、Googleアカウントを持っている人なら誰でも使える機能で、クラウド上でドキュメントを作成し保存しておくことができます。

このGoogleドキュメントでVoice typingという音声入力機能をどのように利用するかをご紹介します。
尚、Voice typingの機能はウェブブラウザのうちGoogle Chromeで使える機能です。SafariやInternet Explorerなど他のブラウザでは使用できません。

(1)Googleドキュメントの作成画面

❶上部メニューの[Tools]を選択し、
❷[Voice typing]を選択します。

googleドキュメントのvoice typing

(2)入力機能が出てくる

❶入力機能の言語選択が[English]になっているのを[日本語]に設定変更。
❷マイクのマークをクリックします
googleドキュメントのvoice typing

(3)喋れば入力できます

マイクが赤い丸のマークになっている間は音声入力がONになっています。喋った通りに入力されます。句読点や改行などは適宜キーボードから操作してください。認識率がかなり体感的に高いとはいえ、もちろん誤変換の場合もありますから、そのあたりは手作業で直していきます。
googleドキュメントのvoice typing

Googleドキュメントは好みのファイル形式でダウンロードすることもできますし、入力にだけ使用して、全文コピー&ペーストして慣れたアプリケーションに貼り付けて整形しても構わないでしょう。

音声入力はとても便利ですが、これは慣れと得手不得手もあり、例えば私自信は、思考と口頭の喋りが同調しないので、原稿を音声入力で書くのはちょっと苦手です。ただ、これは慣れの問題なので、おそらく使い続けていれば、思考と同調してきてキーボードをタイプするよりきっと早く原稿が書けるだろうな、と想像しています。あ、ただし、音声入力の場合、周りに聞こえるのでカフェで原稿を書くということは出来そうもありませんが……。

狩野 さやか

株式会社Studio947のライター、ウェブデザイナー。技術書籍の他、学校のICT活用やプログラミング教育に関する記事を多数執筆している。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)、「ひらめき!プログラミングワールド」(小学館)、「見た目にこだわるJimdo入門」(技術評論社)ほか。翻訳・解説に「お話でわかるプログラミング」シリーズ(ほるぷ出版)。

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