買えぬなら、作ってしまうよデジタル教科書〜Microsoftのイマーシブリーダーで簡単補助教材作成!
いまどきの中学生の英語教育はさぞ進んでいるかというと、先生の発音がきれいとか教科書の内容が変化しているとか、昭和の時代と比べたら素晴らしいこともありますが、しかし、やっぱりどうしても読み書き中心だなぁと感じる日々。英語は4技能重視と言いますが、個人で音声教材を手に入れようと思うと選択肢はこれ。
……CDです。
文字と連動した音声教材が欲しい
すでにCDが売れないという世の中ですから豪華ハードケース入りなんて久しぶりに見たという方が多いのではないでしょうか。ネイティブな英語ですばらしいのですが、再生ボタンを押して教科書見て、一時停止して……と、まぁなんとアナログな作業なのか。文字と音の連動が苦手な子にとっては、そもそも音と文字を結びつける手がかりがありません。でも、ないよりは、はるかにましで、パソコンに取り込んで再生して使っていました。
しかし!ぜいたくは言いません。CDが最先端の技術ならそれでも構わない。でもCDは昭和の最先端のはず……。
いまは2020年です。スマホが音声認識をしてくれて、どんなテキストデータも簡単に読み上げしてくれる時代。
展示会などでデジタル教科書を何度も見てきた限り、デジタル教科書ならば文章をタッチしたら音声がさらさらと流れます。他の凝った機能はいらないし見た目もどうでもいい。せめてその機能だけでいいから使いたい……。
デジタル教科書が個人で購入できない!!
デジタル教科書を個人で購入できないかと教科書会社に問い合わせてみると直接購入はNGで、販売は学校経由との回答。子どもが通学している学校では教師用は導入済みでも他のほとんどの学校同様に学習者用デジタル教科書は未導入。一応学校に確認したものの、学校経由でも個人購入の道は開けず。この点について、学校を批判するつもりは全くなく、仕方のない段階だととらえています。
これは私の想像ですが、個人の購入ができないのは、現時点では、教科書会社側のライセンス管理やデータへのアクセス方法のルール作りなどの問題が大きいのではと考えています。そして来年度中学校は新学習指導要領がスタートし教科書も切り替わるので、もうちょっと待って……ということもあるかもしれません。また、会社ごとの方針が違う可能性もあり、展示会などで聞いてみると、個人への販売の準備をしているという会社と検討中という会社の両方がありました。
買えぬなら、自分で教材作ります!
さて、技術は進んでいます。買えぬなら、作ってしまうよデジタル教科書。……仕方ないので同様の機能の補助教材を自作します。
筋を通してデジタル教科書を購入する努力はしました。この先の手順は、教科書を複製したということではなく、個人の学習のためのノート作成と捉えています。アナログでノートを作って勉強する代わりにデジタルでノートを作って勉強に使うというだけです。
ここで強力な威力を発揮するのがMicrosoftのイマーシブリーダー。教材を作るといっても必要な作業は本文を書き起こすだけです。一番わかりやすく手軽なのMicrosoftのOneNoteでの使用なので、それで解説しましょう。OneNoteの基本的な使い方はここでは省略します。
まず、教科書本文をただOneNoteに書き起こします。地道にタイプしても構いませんし、今はスマホのカメラで撮影するだけでOCR機能でテキストを取り出せるツールが多いので、好きな方法を使ってください。この例では教科書の単元ごとにOneNoteで別のページにしました。
画面上部のメニューから[表示]-[イマーシブリーダー]を選びます。
するとこんな画面になります。画面下部の[再生]ボタンを押すだけで、読み上げがスタート。文中の読み上げている箇所がハイライトされます。イマーシブリーダーは「読みの困難さ」をサポートするツールなので、読んでいる箇所が明確になるよう視覚のノイズが減るように工夫されているのです。画面からアプリのツール群が消えるのもそのため。
英語学習のためのツールというわけではありませんが、慣れない言語を学ぶにはとても好都合。機械読み上げ音声ですが、実は現実のデジタル教科書も、各社の差を整えるためか、標準スペックはリアルボイスではなく機械読み上げという線引きがされているそうです。リアルボイスの読み上げが既に装備されていても、それは付加価値部分として切り分ける必要があるとか。
読み上げ速度や音声のコントロールももちろん可能です。
背景色と文字色の組み合わせや文字間隔を変えられるのも「読みの困難さ」のサポートの一環。快適な見た目は人によって違い、これで読みやすさが格段に上がる人もいます。
さらにとても便利なのは、絵辞書機能が備わっていて、日本語訳までつけられること。単語ごとに個別に音声を聞くこともできます。マウスがフォーカスしたときのハイライトの範囲を行ごと/段落ごとなどで設定ができるのは、視覚的なノイズの整理でしょう。
そして、これが本当に全く手間いらずで最強に助かるのが、品詞分解してくれること。動詞とか名詞とか、色づけして示してくれます。
いずれの機能も要不要に応じてON/OFFできますので、用途に応じて使い分けてください。
動画にしたので、どんな感じかチェックしてみてください。
OneNoteのデータは基本的にクラウドストレージOneDriveに保存されているので、別のパソコンやタブレットからでもOneNoteのウェブ版を使えば自分のIDでサインインするだけで使えます。
イマーシブリーダーは「読みの困難さ」のサポートをしてくれるので、もちろん日本語でも全く同じ機能が使えます。国語の文章で活用することもできますね。
デジタル教科書の議論をしている間に技術は先へ
デジタル教科書に関する現状や議論は以下の囲みで簡単に示しました。議論をしているうちに、技術はどんどん先へ進み、誰でもごく簡単な手順でこの程度の機能は使える世の中になっています。論点と現実に個人が既に使える技術がかみ合わないということがないように、強く希望、期待します。
現時点で各社のデジタル教科書をチェックした範囲では、データ形式や仕様に統一ルールがなく、ビューワーも教科書会社によって違うなどの課題があります。また、紙のレイアウトをそのまま画面で見られるようにするのが基本になっているので、タブレット等で表示したときに果たして見やすいのかどうかという課題も。著作権の問題か、本文のコピー&ペーストもできません(「機能」として「引用機能」が備わっているもある)。
Microsoftのイマーシブリーダーのページに掲載されている動画がこちら。
はじめまして
私は愛知県で塾を経営しているものです。
先生の記事はとてもためになることばかりです。今後も楽しく、新しい記事の掲載を期待しています。
実は、コロナ禍での塾の在り方をいろいろと考えています。
しかし、良い考えが浮かんできません。
また、ITの活用方法にしても悩むことが多くあります。
どんな塾の形態がいいのでしょうか?親御さんはITを活用することに
どんな反応を示しているのでしょうか?
アドバイスお願いします。
コメントありがとうございます。
新型コロナで直接指導ができないことが課題でしたら、ITを活用したなんらかの遠隔指導は解決策になるかもしれません。学習効果を上げるためのIT活用でしたら、また別のアプローチになるかと思います。
塾の目的や形式によって、ふさわしい方法は異なると思います。学校の事例にもヒントがあるかと思いますので、ぜひ、IT活用をしたいろいろな実践例を参考になさってみてください。
保護者は、塾に通わせる目的から推測すると、子どもに自律的な学習習慣がつき、学習効果が上がれば、手段が変化しても喜ばれるのではないでしょうか。