松田校長の小6理科プログラミング授業公開〜心拍センサーで脈拍を測ろう!


6月30日(金)、小金井市立前原小学校で「プログラミングで『人の体のつくりとはたらき』を学ぶ」をテーマに授業公開と研究協議会が行われました。

6年生の理科の学習の中でプログラミングを活用した学びを展開した今回の試みは、小金井市立前原小学校(松田孝校長)、国立大学法人東京学芸大学 加藤直樹研究室(加藤直樹准教授)、株式会社アーテック(藤原悦代表取締役社長。当日協議会への参加は福長正人取締役東京支社長)、株式会社CA Tech Kids(上野朝大代表取締役社長)が共同で研究体制を取っています。

松田校長のプログラミング授業公開〜小6理科で心拍センサー

心拍センサーで脈拍を測る

6年生が理科で学ぶ「人の体のつくりとはたらき」から心臓の働きと脈拍に注目し、心拍センサーを使って脈拍を測るためのプログラミングに取り組んできた授業の第3回目が今回の授業公開でした。

装置は、Arduino互換のStuduino(スタディーノ)というアーテック社の基板に心拍センサーをつなぎ入力用に。出力用にはアーテックのLEDパーツがつないでありました。タブレットPCとStuduinoをつなぎ、プログラミングにはPCでScratch(スクラッチ)を使っています。このセッティングは全て事前に先生側で済ませてあり、子ども達はすぐに使える状態から授業を始めます。

松田校長のプログラミング授業公開〜小6理科で心拍センサー

1分間の脈拍を測定

まずは、前回授業の復習を兼ねて、心拍センサーで得た値から1分間の平均脈拍数を計測するプログラムを完成させて各自自分の脈拍を測定してみるところからはじめます。子ども達はあらかじめ未完の状態で用意されたプログラムのファイルを開いて、Scratch上で命令ブロックを組み合わせるのですが、となりの人と相談したりしながらいろいろと試します。

センサーの値を脈拍1回としてカウントするだけでも、プログラムにすると細かいステップがありプログラミングらしい独特の考え方が必要で、1分間の脈拍数を出すために、カウントした脈拍数を経過時間で割って60をかけるという算数的な考え方も含まれています。

実作業はScratchのブロック型のプログラミングパーツを組み合わせていくだけなので見本通りに作るなら操作自体は難しくありませんが、小6とはいえ全員がこのプログラムの論理構造を理解するのはおそらく難しいでしょう。

松田校長のプログラミング授業公開〜小6理科で心拍センサー

ただ、プログラミングを覚える過程では、まずは見本の真似をして組んでみて動いたのを確認してから、ゆっくり理解する……というのもよくやることなので、厳密に論理構造を理解することを授業の目標にいれなければ、問題にするようなことではありません。実際、「今日初めて動いたのでうれしかった」という感想を書いていた子どももいたので、意味がわかってもわからなくても動いたらうれしい、というのは大切な感覚です。

ひん脈になったらどうする?

次に、今回の授業のメインの課題です。脈拍数が高くなるひん脈ってどういう状態か?という身体の話のあと、脈拍が1分100を越えたら何かしらイベントを起こすというプログラミングの課題に取り組みました。これも、あらかじめ用意された未完成のプログラムをファイルを開いて作業を始めます。

このためにLEDライトが出力用にセッティングされていましたが、これを光らせるよりも、Scratch上のネコのキャラクターに何かを喋らせたり色を変えたりということをしている子どもの方が多かったようです。心拍数を上げるために手を繰り返し振る姿もあります。そして、もちろんそこまで至らずに苦労してる子どもも。

この作業には20分を確保してどんどんやりたい人、そこそこのペースでやりたい人、ゆっくりペースで先生のサポートも受けながらやりたい人に、だいたいのエリアを分けて移動させて作業環境を作りました。子どもの進度に合わせて教師は「メンター」「コーチ」「ティーチャー」という様々な役割を担う必要があるという松田先生の考えが反映されています。

松田校長のプログラミング授業公開〜小6理科で心拍センサー

サポートが欲しい子ども達に対しては、ちょっと先生の手が足りないかな、という印象もあります。
いずれにせよ、こうした機器を使う学びは、問題が起きた時に機器側の問題かプログラム側の問題なのかを切り分けるためにも、TA的な立場のスタッフが多めに確保できないと、日々の授業で取り入れるのは難しい面もありそうです。

後からの松田先生の話にもありましたが、PCのセッティング、機器のセッティングとチェックだけでも人数分行うには事前準備にとても手間がかかるので、専門の支援員や準備のための時間を確保するなどの問題をクリアする必要が必ずあるでしょう。

先生をウソ発見器にかける

授業の最後の方で、別のクラスの先生をゲストに招き、事前に用意しておいたプログラミングを利用して、簡易「ウソ発見器」のデモが行われました。心拍センサーをつけたゲストに松田先生が次々に質問をして全て「いいえ」で答えてもらうというもの。ゲストの心拍が上がるたびにブザー音と共に画面にアラートの表示が出ます。

子どもたちはうれしそうに笑って見守ります。実習よりこっちが楽しかった子どももいるだろうな、という喜び方でしたが、この応用デモを見て大笑いすることも、実は大切な学びだったと感じます。

基本的に子どもたちが作ったプログラミングと全く同じで、心拍数が設定した基準を越えた時のイベントをブザー音とアラート風のアニメーションにしているだけです。同じカラクリでも、演出次第でアウトプットや楽しさは全く変わります。ウソ発見器という「演出」と、ゲストが答えにくい質問を出すという「ストーリー性」がものづくりの大切な要素だということに子ども達が気づけたなら、そこは非常に重要な学びになったでしょう。

もしあのデモを見て、「くやしい!同じこと考えてたのに」とか「あんなのつまんない、もっといいアイディアがあるのに!」と思った子どもがいたなら素敵なことで、その子のクリエイティビティをどんど伸ばして欲しいと思います。

プログラミングありきで用途を考えるのではなく、やりたいことがあって実現したいことがあるからこそ、プログラミングが必要なわけなので、そこを体感することはプログラミングの学び重要な要素のひとつになりました。

教科の中でプログラミングの学びを取り入れるということ

新学習指導要領では、プログラミングは教科として定義されてはいません。

新学習指導要領解説では、特定の「プログラミング言語を覚えたり」「技能を習得したり」することではないと明言しています。

重視されているのは、「プログラミング的思考」を育むことや、コンピュータや情報技術によって社会が支えられていることに気づき問題解決をしようとする態度を育むことです。その結果「教科等における学習上の必要性や学習内容と関連付けながら計画的かつ無理なく確実に実施されるものであること」という位置付けになっています。(以上「」内は新学習指導要領解説より引用)。

つまり、従来の教科の中で、プログラミング的な論理的思考力や問題解決能力を育む学びが求められているわけです。

教科の中でプログラミングをやるとなったときに気をつけなければいけないのは、教科の学びを促進するための役割という位置付けにこだわりすぎることだと思います。それでは、単に教科のための理解促進ツールでしかありません。プログラミングとして取り組むからには、プログラミング的なものごとの捉え方や視点を学べるものでなければ意味がない。

そこを改めて確認し、どうやって教科の学びにプログラミングの視点を乗せていけるか、具体的なモデルをこれからもっと示していく必要があることを感じました。

そのひとつのチャレンジとして今回の前原小学校の授業が位置付けられるでしょう。

※最後の項、「新学習指導要領」を「新学習指導要領解説」に修正し、一部加筆修正しました。(7/20)


狩野 さやか

株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブやアプリのデザインを中心に制作全般担当。「ICT toolbox」運営責任として、特に家庭や学校現場でのアイディアや取り組みに注目している。子育て分野では他メディアにコラムを寄稿し、「patomato-ふたりは同時に親になる」を主宰してワークショップ等を行っている。

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