機器に恵まれた研究校とそれ以外の温度差〜2016年「教育の情報化」推進フォーラム雑感


2016年3月4日(金)、5日(土)に開催された「JAPET&CEC成果発表会 『教育の情報化』推進フォーラム」に行き、小学校の実践発表を中心に聞いてきました。今回は速報として全体的な雑感をレポートします。

指定校の取り組みが一巡した?

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大まかな印象として、ICT教育の研究指定校などになりハードウェアやネットワークの環境が充実して恵まれた環境の学校が、より安定した運用をし始めている印象を受けました。子どものツールへの習熟度は上がるし、学校現場も、機器の扱いには慣れてくる。

例えば、タブレット利用では、子どもが考えをまとめるのにプレゼンテーションを作成したり、フィールドワークで観察や取材にカメラを機能を使う、ということが、より「普通のこと」になり始めているようです。また、共有系のシステムが入っているからこそできるネットワークを生かした使い方も積極的に試されています。各班の成果物をネットワーク上で相互に評価しあったり、タブレットを家庭に持ち帰り、集めたインタビュー素材を家から送信する、というような方法です。

一方で、どこか「機器ありき」でないと実現しないタイプの実践はちょっと一巡したような印象も受けました。

ハードウェア「マッチョ」現象に負けるな!

機器が豊富な学校の教室風景には、どこか違和感を覚えるところもあります。昔ながらの大きな黒板+チョークのある教室の片隅に、特大ディスプレイの独立した電子黒板がドンと配置され、そこにパソコンが接続されていて、生徒の机にはタブレット端末があり……。

とてもスムーズにそれらを使い授業を進めている実践の様子は気持ちよくもあり、授業の内容自体は工夫がいっぱいです。

でも、その教室風景はどこか、ちぐはぐに感じたりもするのです。
(1)電子黒板でパソコンからの資料が表示され
(2)前方のリアル黒板にはマグネットで教材や子どもの発表物が貼られ
(3)別の移動型ホワイトボードに更に子どもの発表物が貼られ
……と、三者三様同時に使ってものが増えている状態。

本来、オールインワンでなんでもこれでできる、というのが電子黒板の目指していることかもしれません。でもその電子黒板というデジタル機器の「使いづらさ」や「不足感」が、アナログで補われている逆転状態が現場で起きている。板書こそ減っても「マグネット大活躍」なわけです。

もちろんテストケースなわけですから「付け足し感」が強くなるのは当然といえば当然です。でも、機器を使うことが目的になったり、「それでなくてもできること」をしているだけだったりしないか、そこは常に気をつける必要があるでしょう。

機器に恵まれた学校がこれからすべきこと

一方、限られた環境ながら先生の創意工夫が生きている実践も元気です。こちらの方が、多くの教室では参考になる可能性が高い。そして、この方面の方が面白い実践が多いような印象を受けました。

「モノが空から降ってきて使い方を考える」のと「モノが無いけどどうしてもやりたい!」という出発点の違いが、実践の空気感ににじみでていたように思います。指定校の実践がつまらない、という意味ではなく、にじみ出る「切実さ」にどこか温度差がある。

でも、機器に恵まれた学校は今ようやく一巡して慣れたところ、というふうに考えれば、比較的「普通」の使い方が中心になるのも当然だし、普通に使えることの方が重要です。こちらもまだまだこれからです。

「機器に使われない」「テンプレート的でない」アイディアが、むしろこれからもっとどんどん出てきて面白くなるはずです。次の段階で、機器が豊富な学校の先生がすべきことは、テスト的に提供され使うことになったハードウェア/ソフトウェアを「評価する」くらいの視点をもつことです。本当にこの機器やこのソフトは学校現場に有用か?変えるならどう変えたらよりよくなるか?ということを判定していけるのは機器に恵まれた学校の役目です。

電子黒板ひとつとっても、ビジネス寄りのプレゼンテーション的発想で「説明が華やかになっただけ」ではいけない。「子どもの理解を促進すること」や「子どもが自ら考えること」にちゃんとつながっているかどうか、厳しい目で判定する必要がるでしょう。

機器が豊富な研究校の次のステップ、機器が少なくてもがんばる!、のどちらの取り組みも大切です。ぜひがんばって実践を積み上げてほしいと思います。


狩野 さやか

株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブやアプリのデザインを中心に制作全般担当。「ICT toolbox」運営責任として、特に家庭や学校現場でのアイディアや取り組みに注目している。子育て分野では他メディアにコラムを寄稿し、「patomato-ふたりは同時に親になる」を主宰してワークショップ等を行っている。

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